砂にまみれて伝わる想い



「ねぇ、そのチョコだれにあげるつもりなの?」


道端を歩いていると、いつも私に意地悪をする人達が
私の前に立ちはだかる。

今日はバレンタイン・・・片思いだけど
ずっと好きだった人に渡そうと運悪く私は
その人達に見つかってしまった

「べつに・・・・」


「べつに?まさかさージェイクにあげるとか言わないよね?」


「・・・・・」


「どうなのよっ」


ドンッ・・・と肩を押され
私はそのまま尻餅をついた


「メアリーがジェイクのこと好きだってアンタ知ってるよねぇ?」


「・・・・」


この女の妹メアリーがジェイクに恋をしているのは
知っている・・・でも譲るつもりなんてない

でも、やはり怖くて
言い返す言葉がみつからない


「もう一度聞くけど、そのチョコはジェイクに渡すチョコなの?」


「・・・・ちがい・・・ます」


「そーぉ?なーらよかった!んで、そのチョコは誰に渡すの?」


なんで嘘言っちゃったんだろう・・・
情けないと思うしかなかった・・・目の前の女は
私を見下し満足そうに笑う姿が目に映る


「というか、あんたみたいな小汚い娘から受け取る男なんていないわよ、馬鹿ね」


「あっ!」


そう言って私の持っていたチョコを奪われてしまった
ラッピングされたリボンを解き中を覗こうとする女をとめようと
私は立ち上がり必死の思いで止めようとするんだけど


「やめて!・・・開けないで!」


「なによー別にいいじゃない!」


私より身長は高く、届かないことをいいことに
目の前の女は腕をあげながら箱をあけると


「なぁに?これ、「LOVE」?・・・ぷははは!ラブだってぇー!!!」


ゲラゲラと下品に笑えば
私のチョコは投げられて無残にも床にこぼれ落ちてしまった


せっかく作ったのに・・・
失敗しまくってようやく成功したのに・・・・


悔しくて涙がこぼれてくる


「うっ・・・・・くっ・・・」


「何、泣いてるのよ、こんなチョコいくらでも売ってるじゃない」


いい気味だと、近くに隠れていたメアリーと一緒に

「ジェイクのところにいきましょう?」と気品のいい声で
ジェイクの住む街へと足を運びはじめる。


このまま、ジェイクはメアリーのチョコを受け取ってしまうのかな・・・
今から作っても間に合わないし・・・

散らばったチョコをかきあつめていると


「なんだぁ?ルナじゃねぇか」


聞き覚えのある声
なんでここに居るのか不思議にさえ思う


「ジェイク・・・・」


「派手に散らばってるじゃねぇか・・・誰にあげる予定のチョコだったんだ?」


「転んだら・・・こうなっちゃいました・・・・あはは」


なんで強がってしまったのか私にもわからない
本当はあの女に突き飛ばされて、奪い取られて投げ飛ばされた

こんなこと言ったら
どうなってたんだろう・・・


「転んだ?・・・そのわりにはお前傷一つねぇじゃねぇか」


「か・・・軽く・・・ね?」


「軽く転んだだけじゃこんなにチョコ飛び散らねぇだろ?」


そういう観察力だけはこの人は鋭い
こんなところで転べば膝など絶対に擦りむく場所だ

すぐバレちゃう嘘をついちゃうなんて
私もバカだなぁ・・・



「誰かに投げつけられたんだろ?」


「・・・・そ、そんなバカなことする人いませんよ・・・」


「その光景を見ていたとしてもか?」


「え?・・・」



見ていた・・・

情けない光景をすべて見られていたということ?
つまり全部知っていて・・・



「ごめんなさい・・・嘘ついてしまって・・・」


「謝ることねぇよ・・・ひでぇ事するんだなぁ女ってほんと怖ぇー」


「あ・・・そんな落ちたもの食べちゃお腹壊しちゃいますよ!!」


怖い怖いと言いながら落ちているチョコを
バグバクと食べ始めるジェイクに私は驚かざるを得ない・・・

砂埃がひどいこの地区だから
チョコはもう砂にまみれつつある・・・


「ん・・・うめぇな!これはうめぇ」


「ジェイ・・・ク」


「最高のチョコだぜ、これ」


砂が口に混じって辛そうな表情を浮かべながらも
美味しいといってくれるジェイクに
複雑な気持ちもあるけど・・・嬉しくて泣いてしまう

そんな自分が情けなく思うけど
こんな形でチョコを食べてもらって・・・



「あ、そうだオメェはこのチョコどいつにやるつもりだったんだ?違うとか言ってたけど」


「え・・?なんで・・・?」


「なんでってオメェ、チョコこんなんにされちまってんだろ?リンゴでも買って伝えてこねぇとな」


どこまでこの人は優しいんだろうか・・・
でも、もう隠す必要はない


「私があげようとしたのは・・・ジェイク・・・あなたです」


「うぉっ?!」


「どうしました?」


「なおさら食わねぇとな!」


「あ・・・え・・・?」


まだ残ってるチョコを口に放り込む
砂が混じってジャリジャリとした音までこちらに聞こえてくる
止める隙もなく、目の前の男はチョコを放りこみながら



「ルナが好きな男が俺でよかった」


「へ・・?」


「実はルナがどこの野郎にチョコをやるのか気になってな・・・ここまで来たんだ」


照れくさそうに言うジェイク
両思いだって知って私はつい嬉しくてまた泣いてしまう


「おめぇ、今日で何回泣いてやがるんだ」


「ごめ・・・・んなさい・・・」


「あいつらのいるこの街には居たら辛ぇだろ?俺の家にこい」


そう言って最後のチョコを食べ私の手をとったジェイクは
バイクにまたがり私もその後ろに跨ろうとすると


「お前は前だ」


腕を引っ張られジェイクとバイクに挟まれるように
跨がされる。

背中から感じるジェイクの体温が
とってもあったかく感じた


にまみれて伝わる想い







人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -