「ルナーっ!!」

 川から上がったフィンは、必死にルナを探す。木々の間、木の根元、丈の長い草の中、岩の影・・・。しかし、ルナは見つからない。

「ルナーっっ!!!」

 フィンは目に涙を浮かべていた。

 自分がルナをダイイング状態にさせた一因であることに全く気付いていないくせに、その心は不安でいっぱいだったのだ。

 ずっと前から好きだったルナ。その彼女が今、ダイイングという危険極まりない状態で一人で居る。

 もし彼女が・・・そう考えると、フィンは心臓が押し潰されそうだった。

「ルナ・・・」

 フィンが川岸にある木に目を向けると、水の中に向かって伸びる数本の枝に何かが引っかかっている。岸と水中に跨るようにして引っかかっている塊・・・。

「ルナっ!?」

 その塊は、紛れもなくルナだった。上半身が川から這い上がったところで力尽きたようである。

 フィンは駆け寄り、ぐったりとしたルナを引き寄せると拳を作った。その拳をルナの胸、心臓の上に優しく“トンッ”と落とす。相手がクリスやピアーズ並の男ならば“ドスッ”とやった方が良いかもしれないが、今の相手は自分の想い人なのだ。そんな力強く“ドスッ”とやって、その衝撃で余計にダイイングにさせてしまう訳にはいかないかった。

「・・・ぅ・・・フィ、ン・・・」

 うっすらと目を開けたルナ。それを確認したフィンは、2粒残っていたタブレットを取り出し、ルナに食べさせた。

 苦しそうにしているルナ。タブレットが効くまでに時間がかかるようだ。

 フィンはルナを抱き上げると、すぐ先に見える小さな小屋へと急いだ。






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