#その少女、転生



「ルナーまった明日ねー!」


「うん!ばいばーい!」


まさかこれが人生最後だとは誰も思わないだろう・・・
いつものように帰り道を行く私はただまっすぐ前へ・・・

しかし、青信号の横断歩道を渡ろうと
真ん中までたどり着いた矢先に起きた事故
大型トラックに衝突し私の意識は飛んだ・・・

「ん・・・・わたし・・・・」



「おぉ、ようやく気づいたか愛しの孫ルナよ」


目が覚めれば、なぜか見たことのないおじいさんが
私を孫だと言う・・・夢でもみているのだろうか?
だけど、トラックにぶつかったというのに体のあちこちの痛みなどなく
体をみれば見たことのない服装の自分がいた


「あの・・・」


「ルナよ、あんな危ない場所で何をしてたんだ、あれほど行くなと言ったのに」


なにをこのじいさんは言ってるんだろう??
私の両肩をつかんで体を揺さぶられる。


「あの・・・あなたは誰・・・?」


「なんと!記憶喪失か?!これは一大事だ!!!皆の衆!!!」


目を丸くしギョっとする目の前のじいさんは
周りにいた白いローブを着た人達を呼びつければ
ザザっと私の周りに立ち、その光景が恐ろしく思う

「ルナよ、本当にワシがわからないのか?お前はワシの可愛い孫娘じゃ。」


「孫・・・」


「アル・ムアリムを忘れたか?」


「アル・ムアリム」

聞いたこともない名前なのに、不思議なことに
私の脳内には徐々にこのじいさん、アル・ムアリムと共にしてきた人生が
蘇ってくる、そしてこのローブをきた・・・男たち・・・いえ、一人の兄だと慕っていた
人・・・そう、アルタイル・・・・


「アル・・・タイル」


「アルタイルだと?!一体どういうことだ!」


あぁ、わけがわからなくなる
だってついさっきまでは・・・仕事場にいて・・・パソコンいじってたのに
その記憶はどんどん薄れていき、こちらの時代の記憶が鮮明となってくる

正直頭が痛くてしょうがない
記憶の整理をしている最中、アル・ムアリムはなぜかずっと怒っている
そのアルタイルという名前を口にした瞬間だ・・・敵?いえ・・・そんなはず・・・


「ルナ・・・俺の名前は覚えていてくれたのか」


「わしの名前を思い出せなかったのに、アルタイルだけなぜだ!」


「わかりません・・・おじさま・・・ぇ?」


「ほぉ、一時的な記憶喪失だったんだな・・・・しばし、安静にしていろ」


「・・・・はい、おじさま」


私の口から「おじさま」という言葉が発した
一体何がどうなっているの?強いていえば、私はこの世界にいままで
存在していた・・・というわけ?パラレルワールド・・・そんなわけない
明らかに今までいた文明とまったくちがう・・・むしろ時代が巻き戻ったかのような・・・


前世の記憶?そんなわけない・・・
先祖が、ここなら私はハーフだってことじゃない。。。
わけがわからない・・・


「大導師・・・」


「なんだ、アルタイルよ」


「ルナは、無事なのだろうか」


「なに、すぐに記憶は元に戻る、お前が気にする間でもない」



横をみればおじさまとアルタイルから
火花のようなものが見える、敵対視でもしてるかのような・・・
同じ同房ならそんなこと・・・


「すまんが、アルタイル。わしは少し出かけてくるワシが留守の間頼んだぞ?」


「はい・・・」


するとなにやら急ぎのようなのか
早歩きでこの場を去って行くおじさま・・・・

そんなことを気にしながら
いろいろ状況整理をする、俗に言うタイムスリップしたならその現世の
服装で飛んでくるというケースはよくある。

でも違う服装、そしていままでここに存在していた私という人間
転生?生まれ変わり?!いえ・・・それだったら赤子として・・・いまいちよくわからない


「ルナ・・・・ようやく二人きりになれた」


「はい?」


何を言い出すんだこの人は・・・
口角を上げながらこちらに歩んでくるアルタイル
まったくもって理解しがたい光景だ


「俺は今幸せだ」


「人の不幸が・・・ですか?」


「そうじゃない、ルナと居られるということだ」


私の寝そべっていたベッドに腰をかければ
私の方へと顔を向けるアルタイル


「ねぇ、一つ聞いてもいい?」


「なんだ?」


「ここは一体なんなの?アルタイルは何者なの?なにかの信者?白装束?」


「ルナ・・・ここはマシャフだ、そして俺はアサシン」


アサシン・・・アサシンって暗殺者?
え、なにここって暗殺者の集まり?!

「ルナは俺が守る」


私はなに、他のやつらに命を狙われているというわけ?!
ちょっとまってよ・・・私もアサシンの端くれって言われないだけまだ
マシなんだけど・・・狙われてるの?


「あの・・・私ってもしかして命を狙われているの?」


「いや・・・お前を手にしたいと思ってるやつは山ほどいる」


「え?」


何だこれーー!!
私もしかして何か特異体質とか持ってるわけ?
それを手にしたいから・・・皆必死とか?


「俺もルナを狙っている一人だが」


余計意味がわかんない!
ということは私逃げたほうがいいってことよね!
仮に特異体質があったと考えて・・・

ん?でも特異体質って?

自分で言っておきながらますますわけがわからなくなる
この状況をなんとかしてほしい


「あの・・・じゃぁ私は逃げたほうがいいということですよね・・・」


「俺のこと嫌いか?」


「?!いえ、わけがわからないです」


「・・・」


なんでそこでシュンってなるんですか!
まったくもって意図がつかめない・・・

まぁ、とりあえず逃げたことに
越したことはないよね・・・


ベッドから飛び降り私は一直線に逃げようと
走りだす


「待て!どこいくんだ!」


アルタイルも後ろから追うように
走り出せば私も必死に捕まるまいと走る

大広間に出て出口へと走っていたら
上からアルタイルが降ってくる


「ちょっわぁっ?!」


ギリギリなところをすり抜けて私はまた来た道を走れば
なんと器用に手すりにのって走り壁をつたっていく姿が目に映る

まるでスパイ○ーマンをリアルで見てるようで・・・
そのすごさについ目を奪われていた私は
すぐ自分のところまで来ていることさえ気づかず

「逃がさないぞ」


目の前に現れたのは
アルタイルだった・・・こんなに走っていても
すぐに追いつかれては逃げることなどできず


「ルナ・・・」


腕をつかまれた私はどうすることもなく
小さな個室へと連れて行かれる

立て付けが悪いのか砂埃が天井から溢れているのが
目の端に映る

「あの・・・」


「ルナ・・・お前を見ているだけで胸がズキズキする・・・」


「そう言われましても・・・私はお医者様じゃありませんし・・・」


「病的なものでもない・・・」


なんでそう断定できるのか私にはまったくといって理解できない
普通胸が苦しいときたら病院に行き診察してもらうのが一番だと
私はそう思うんだけど・・・


「ルナ・・・ルナ・・・」


先ほどとはちがってイヤラシく思えてならない
声を出すアルタイルに、戸惑う私は
徐々に後退せざるを得ない


すると・・・ガタタッと木が崩れる音が聞こえた瞬間


「ルナ!!!!」

「きゃっ」

私の視界がいっきに反転した瞬間
木の戸棚が崩れたのだろう、崩れて砂埃が舞う中
私の唇にはアルタイルの唇が重なってることに気づく・・・


「んっ・・・・・」



「・・・・っ・・」


しばらくお互いどうすることもできず
そのまま固まっていると


「・・・弟子よ・・・これは一体どういうことだ?」


唇が離された瞬間に聞こえてきたのは
用事を済ませ帰ってきたおじさまの声だった・・・


「弟子よ・・・・・こっちにこい」


「これには深いわけがっ」


「言い訳はどうでもいい・・・こっちにこい」


怒った口調でおじさまはアルタイルを呼びつける
事故だと主張するアルタイルに聞く耳を持たないおじさまは
そのままズカズカと中庭へとアルタイルを連れ出す
私はそれについていく、別について来いとは言われてないけど



「弟子よ・・・ワシの居ない間にルナの唇を奪うとはけしからん!」


「いえ・・・あれは」


「問答無用じゃ!!!」


反論するアルタイルを無視し殴ったり蹴ったりを
繰り返すおじさま・・・私があれは事故だと言えば
この状況は収まるのだろうか?

殴ったり蹴ったりの暴行を繰り返されるなか
アルタイルは抵抗一つしないでされるがままでいる

そんな姿に私は・・・胸が締め付けられる


それでも納得のいかないおじさまは
剣を抜き始める


「おじさま!!!ダメです!!!!」


口より先に行動をとっていた私にも驚きだ
アルタイルが私を手にしたい理由そんなもの理解できないけど
でも目の前で殺されるところなんて


見たくない



「ルナ!離すんだ!!お前の初であるキスをこいつはこいつは!!」


「いいんです!・・・いいんですよ・・・そんなことどうだっていの!」


剣をふりかざすおじさまの腕を必死に掴んで止めさせる
だけどいくらおじいさんでも、力はとても強い
止めるだけで精一杯の私


「よくない!ワシの可愛い孫娘を・・・」


「でも、アルタイルの言ったとおり事故なんです・・・助けてくれたんです・・・偶然唇は重なちゃったけど」


「事故?!そんなのは嘘じゃ!」


「嘘じゃないよ・・・信じて!」


中々受け入れてくれないおじさまは剣をいまだ振りかざそうと必死
でも、大事にしてくれてるって気持ちだけで私は嬉しくて

「おじさまの気持ちはとてもうれしいよ」

そっと笑えば、おじさまは剣を振りかざすのをやめ
剣をそのまま下へと落とせば
私をギュっと抱きしめてくれた


「ルナは優しい娘だ・・・・誰にも渡したくないんだ」


「でも、私ようやく気づいたんです・・・心の片隅で抵抗しなかった私が・・・いたんです」


「・・・ルナ?」


いまだ寝そべっているアルタイルが不思議そうに
こちらに顔を向けている


「まだ、よくわかんないです。この気持ちは初めてなので・・・」


「そうか・・・ルナもワシから離れゆく運命なのか」


少ししょんぼりとするおじさまが
なんだか可愛らしくて、頬に手を添えてやれば
その両手で私の手を包んでくれる


「アルタイルよ・・・まだワシの孫娘はやれん」


「・・・・」


「だが、ルナを泣かすような真似だけは絶対するな?」


「分かっております、大導師」


本当に自分のことを大切にしてくれてるんだなーって
そう思うとなんだか嬉しくて
アルタイルも少し認めてくれたことに嬉しさを感じているのだろうか
フードであまりわからないけど口が弧を描いてるのがわかった


この先私はどうなるのだろうか・・・
もう現世にいた自分の記憶がなくなっていっている
もう戻れないのだろうか??


---END---

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