死をみて恋をみて
bookmark


フィレンツェの夜風が気持ちよくて
私はよく夜に散歩をする

どんなに辛いことがあっても
忘れられる


それぐらい私とって癒しの時間でもある
だけど、なぜか今日は不穏な空気がうごめいている
そう感じた時には遅かった


ドサリッ・・・


私の目の前をでかい影を通り
足元に重くズッシリした何かが落ちる音が聞こえて
視線をむければ


そこには・・・


「え・・・・死んで・・・・る?!」


目を見開いて喉から血を流す兵士が
転がっていた


「ど・・・して」


自殺や足を滑らかしたというわけではなく
明らかに何者かに殺害をされている
こんなこと一般人でもわかる

でも、足が動かない声もでない・・・



「やぁ・・・驚かせてしまったね」


いつの間に現れたのだろうか
目の前の白いフードをかぶった男が私の目の前に立っていた

「あ・・・」


「無理もない、死体が目の前を落ちたんだ」


見たことがある。
そう手配書・・・


「あなたは・・・アサシン・・・」


「もう知れ渡っちゃってるのかー・・・それは残念」


それは残念・・・その言葉を耳にした瞬間
殺される・・・そう思った私は早く逃げないと・・・と何度も
何度も脳内だけで・・・


怖くて足がうごかなくて
もう終わったと思っていた


「・・・どうか、お慈悲を・・・」


「君はなにか勘違いをしている、俺は善良の市民を殺めたりしないさ」


「じゃぁ・・・逃がしてくださるの?」


それを聞いて安心した
どうやら殺されたりまではしないようです


「君のような可愛い子をひとりにはできないさ」


「お上手だこと・・・」


不覚にもこのアサシンに褒められて
ついつい気分が良くなった私はなんて単純なんだろう
でも普段言われない言葉を聞いたら誰もがそう思うのじゃなくて?


「君はなんでこんな夜道を一人で?」


「この街の夜風はとても気持ちよくて、辛い事を忘れることができるのです」


「なるほど、それは俺も同じだね」


アサシンというものはとても怖い人だと思っていた
でもこの人は・・・どこか・・・違う気がする

そうとても紳士的で優しい


「そういえば・・・君の名前は?俺はエツィオ、エツィオ・アウディトーレ」


「私はルナよ」


アウディトーレ・・・そうつい先日処刑されていた・・・
じゃぁ・・・この方はその一族?


「よろしく、ルナ」


「えぇ、よろしくね、エツィオ」


握手を求められ私は手をとり
握手をする

とても暗殺者とは思えない
暖かくておおきな手


「君の家はどこだい?そろそろ帰らないと風邪ひいちゃう」


「私の家はあちらでございます・・・あ、エツィオあなたは平気なのですか?身をひそめなくても」


「あ・・・あぁ、帰る場所はないんだ」


それもそうね・・・家は囲まれていて
兵士たちはこのエツィオを血眼にして探しているんだもの

国家反逆罪・・・とてもそんな大それた事を
企むような方でもないような気もするけど・・・


「一つ聞いていいかしら」


「何かな?」


「あの処刑の日に判決された内容は真実なのですか?」


すると先ほどまでの笑みは消え
拳を強く握り締める彼が目に映った


「真実じゃない!・・・俺は復讐するために・・・アサシンになったんだ」


「そうでしたか・・・あなたのような優しい方がいて、ご家族が悪巧みをするようなことは決してありえないですもの」


「信じてくれるのか?!」


「えぇ、信じましょう」


するとあの悲しげな表情から一点
再び微笑みが見えた

一般市民の私でもお力になれるのだろうか?
一人で背負うより分けてあげたらきっとエツィオの心の荷は
少しでも軽減できるでしょう


「今夜私の家へと身を隠しましょう」


「いや、それはできない。ルナを危険にさらしてしまう」


「本日会ってばかりですから、嗅ぎつけることはないと思うの」


「・・・それもそうだな、危険になったらオレは行く、それまではお世話になろうかな」


決まり、そう言って
私の家へと彼を招き入れれば

当然父親は怒鳴っていたけども
詳しい事情を話せば理解してもらえた


当然アサシンというのは内緒だけど



「ありがとう、感謝するよ」


「いいえ、なぜでしょうね・・・あんな事があったのに」


「目の前の死体を落としてしまったのは謝るよ」


まだアサシンになり立てで
うまく対処ができなかったことを知って
私はついつい笑ってしまった

彼は顔を赤くして
「笑わないでって」と必死に訴えていた


「でも、それがなかったらエツィオに出会えなかった」


「嫌な出会い方だけど、そうだね。俺はルナのような可愛い子に出会えて嬉しいよ」


「私を可愛いだなんてあなたぐらいですよ」


「え?それは男が見る目ないだけさ、俺は君にくびったけさ」


「まったまたー」



まだ会って1時間ちょっとなのに
私もあなたにくびったけ


でも、彼を困らせたくないから言わないんですけどね?




---END---


prev|next

[戻る]
「#エロ」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -