どんなときも
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「ルナそこの地図をとってくれ」


「はいはーい」

コンパスを片手で器用に地図を精製するマリク
古い地図を取ると、どこがどう変わったのか
正しい位置なのか、確認をかね念入りにチェックする


「本当・・・器用だよね・・・」


「俺を誰だと思ってる」


その言葉が不愉快なのだろうか、別に不愉快になるような
発言をルナはしていない
おそらく「片腕がないのに」ということがマリクにとって
結びついてしまっているのだろう

病人扱いするような奴がマリクにとって今や敵である
その原因をつくったアルタイルにも向けられている


「マリク・・・よくそんなに地図と向き合えるわね」


「情報が新しければそれだけアサシン教団は有利なのだ」


「アルタイルのため?」


「なんで奴のためなのだ!ふざけるな!」


ここ最近支部に顔を出すのはアルタイルで
信用を取り戻すためとはいえ、度々顔を出す彼のために
色々と協力をしているのではないか・・・そう思うルナなのだが
本人は頑としてそうではないと言い張る


「あいつの顔など見たくもないわ」


「マリク・・・」


コンパスをなげやりに机に叩きつけると
少し驚いたのだろうか、一歩後ずさり片眉をさげたあと
胸に手をあててホッとする


「気持ちは、わかるけど・・・彼はべつに敵じゃないわ?」


「そんなことは知ってる!」


カダールのことがありまだマリクの中では
解決できてないことなのだ、アルタイルの傲慢さに心底腹を立てている
亡くなったのが弟だからこそ余計許せなくアルタイルには冷たくなってしまう

敵ではない・・・そんなことは本人が一番わかっている。
だがやはり・・・


「アルタイルも今は信頼を取り戻していくにつれ自分の過ちを理解していってるわ」


「あぁ、あいつは変わった・・・だがもう戻らないんだ!」


この二人の仲が今でも悪く
アルタイル自身はマリクについて敵意はないが
ただのマリクの一方通行の敵意である


「認めてるだけマリクは偉いわ」


「・・・ガキ扱いか?」


「そんなんじゃないよ・・・ただ、少しずつ認めていることに私は嬉しいの」


「なぜ」


ほくそ笑むルナの意図がつかめず
マリクは疑問の表情を浮かべる


「カダールだって、二人が仲が悪いのは嬉しくないと思うの」


「・・・・」


「でも、二人の仲が徐々に修復に向かってるならカダールだって喜ぶよ」


「なぜそう思う」


「彼は昔から争いごとを嫌ってたからよ」


言われてみればそうだ・・・
顎に手をあて思い返せば、いつも喧嘩をするたびに悲しい顔をみせていた
そう思うと、今の状況ではカダールを悲しませるだけだと理解し
アルタイルへの怒りは徐々に薄れていった


「どんなときだってカダールはそばにいるよ」


「そうだな・・・」


「私だってそばにいるよ」


「お前はアルタイルじゃないのか?」


コンパスを取り地図の精製を開始すると
ルナが思わない発言を残したことに疑問と不信感を覚える
あんなにアルタイルばかりをかばっていた彼女が



「私はずっとマリクの傍にいたいって昔から思ってたから」


ニコっと笑顔をみせ
カウンター越しに顔を近寄せれば、マリクは思わず体を反る体勢になっている

「アルタイルは・・・」


「ただの私のお兄さん的存在だよ?お兄さんという目でしかみれないよ」


「そう・・・か」


なんだか嬉しそうな笑みを浮かべるマリクに
ルナはクスリとまた笑う


「どんな時も一緒に居たい・・・そう思うのは罪かしら?」


「いや・・・罪ではない」


ほんのりの頬を染めるマリクに
ルナはそのほっぺに指をつけば

「なにをするんだ!」と2歩、3歩後ずさる
マリクがおかしくて、また微笑む


「マリクって意外と初なのね」


「う・・・うぶ?!いや・・・お前がいきなりっ!」


「ほらやっぱり」


そんなマリクをおもしろがり
ニタニタしていると


「し・・・仕事の邪魔するな!」

と精一杯の強がりをみせるマリクに
「はいはい」といまだニタニタしながらカウンターから離れる


黙々とコンパスで地図を精製するマリクだが
心臓がドキドキとうるさく、ルナに聞こえてしまうのではないかと
変な心配すればするほど、頬は赤く染まり鼓動は高まる


「・・・・くそっ」


「あらあら」


---END---


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