幸福満腹感(14/15)
「ハンク、あーん」
「やめろ」
「なんでよ!たまにはいいじゃないの!」
今、俺の膝の上に向かい合わせに座っているのは
恋人であるルナだ
相変わらず怒った時の顔がかわいいわけで………
「…………っと、ちょっとハンク?聞いてるの?」
彼女が可愛らしく怒っている原因は………
「ケーキの一口くらい、あーんしてあげたっていいでしょ!」
とのことである。
「俺は、あーんなどされるようなキャラではない」
「私はしたいの!たまにはいちゃいちゃしたいもん」
彼女が下を向いて、俺のシャツを握りしめた。
どうやら泣きはじめてしまったらしい。
「最近、ハンク仕事ばっかりだったから会えなくて寂しかったの」
「…………ルナ………」
俺は、彼女の涙が零れる前に背中に手を回して思いっきり抱き締めた。
「…………一回だけだぞ」
「へっ?」
「一回だけ、あーんしてもいい………」
その時の俺の顔は真っ赤になっていただろう…………
「おっきく口開けてね?はい!あーん!」
「あ、………ぁーん………」
口の中いっぱいに甘ったるい生クリームと少しだけ酸っぱいイチゴの味が広がった。
「おいしい?………ちょっ、んっ」
俺は、正直甘いのが苦手だ。
だからルナに
俺の気持ちと一緒に送り返してやった。
「………おいしいだろ?キスとケーキの味。」
そして、頬についていたクリームを舌でとってやると
イチゴのような真っ赤な顔がそこにあった。
fin*
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