決心
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「え・・・別れたいってどういうこと?」


衝撃的だった
別れってこんなに唐突にくるものなんだと、そう思わされた



「あぁ、そのまんまの意味だ」


「ちょっと・・・それはいきなりであんまりだよっ」


冷たく言い放つ彼
ドンっと言葉で突き放された私は頭の中は真っ白だ


「ねぇ!ちょっと待ってよ・・・・・・・」


私の声など彼には届かなかった
腕を取ろうと伸ばした手はただ空振って空気だけを掴んだ


「理由くらい・・・言ってくれたっていいじゃない・・・」


誰にも私の声は届かない
涙がただぽつりぽつりと床に落ちる音だけ聞こえた






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「ルナ・・・ねぇルナってば」



「ん・・・なに」



寝ていたのか机に突っ伏していたようで
肩を強く揺さぶられて目が覚めた


「目真っ赤じゃないか・・・一体何があったんだ?」


視界がぼやけるなか声の主は
ウルフパックに所属しているルポだった

「ルポ・・・どうしてここに・・・」


「どうしてって、ここは食堂だろう?それより・・・」


「あ・・・そうか・・・私・・・」



失恋したあまりのショックで
近くの食堂で一晩過ごしたんだっけ・・・
まったく・・・


「私、振られちゃったんだ」


「ん?振られた?」


驚いたような表情で一瞬目を見開いたルポ
だが少し深いため息をもらしていた


「別れようと・・・理由は聞けなかったけど」


「ふーん・・・まぁ男女のもつれはいつだって急だからなぁ」


ルポの過去は知っている・・・今も引きずっているのだろうか・・・
少しどこか切な気な表情を浮かべている


「喧嘩したとかはないけど・・・普段会えないし・・・嫌気さしたのかな」


分からなさすぎて頭が痛い
何がキッカケだったのか・・・


「別の思い人ができたとか・・・?」


「「バーサ!?」」


突如として現れたのはバーサだった
クスクスと笑いながら面白がっている


「おい、不謹慎にもほどがあるぞ・・・」


「いや、でも最近アルファリーダーが他の女と歩いているのを見たのよ」


「・・・・ハンク・・・」


知らなかった・・・他の女性と歩いていた?
任務で共に行ってるだけなんじゃ・・・
プライベートで会ってるの?


「任務で行動を共にする仲間じゃないのか?」


「さぁ?それは私にもわからないけど、よく目にするからそう思っただけよ」


「そっか・・・そうだったんだ・・・」


「ルナ?」


椅子から立ち上がり自室にこもろうと決めた
ハンクが別の人と人生を歩みたいのなら私はそれでいいと
そう思うことにした、理由はどうであれ私よりその女性を選ぶ権利ぐらい
彼にだってあるし私が決めることじゃない・・・




そう・・・決めるのは彼だ・・・同時に私にだってある




「ルナ・・・どこ行くの?!」


バーサが呼び留める声が聞こえたけれど
戻るつもりも立ち止まるつもりもない






誰とも会いたくもないただ自室にこもって
考えたかった




でもそういうときに限って





「・・・・ルナ」



「・・・・ハンク・・・・」



一番会いたくない人に遭遇するんだよね・・・
あぁ・・・最悪だ



いや・・・ここはもう隣を通りすぎるか
別のルートをたどって帰るか
しかしこの目の前の男は動こうともしない


あぁ・・・この状況が一番気まずい・・・
どうにか打破できないか考えてる時間が惜しい



横を通りすぎるのをやめて別のルートへと
足をむけて歩き出す


「ルナ・・・」


あああ、なぜ声をかけてくるんだ・・・
振ったのはあなた、振られたのは私・・・傷つけておいて今更なんの用なのか
ぴたりと足を止めてしまった自分に後悔



「・・・・何」



「・・・・」


呼び止めておいて何…何・・・本当に何?
焦る自分がいる一番聞きたくない言葉がきそうで
バーサの言っていた女性の件なのか・・・それとも何なのか



「用がないなら私は行くね、さようなら」


「まて・・・!」


「うぉっ?!」


逃げるかのように走りだすと同時に
腕を掴まれて体の重心が後ろに倒れそうになるが
ハンクが私を支えて抱きかかえてる状態になっている


ますます理解ができない
というかすごい間抜けな声を出してしまった


「これだけは伝えておこうと思ってな・・・・」


バーサの言っていた女性のことか
もしそうなら

「聞きたくない・・・」


耳をふさぐしかなかった
ただでさえ他人の口から聞かされた内容ですら
嫌なのに本人に言われるなんてもってのほか・・・


「頼む・・・聞いてくれ」


「いやだ・・・」


あの時理由すら言ってくれなかったのに
いまさらなんだっていうの・・・
耳をふさぐ腕をむりやり引きはがそうとしてくる

正直すごく痛い
男性の力には敵わない・・・グググッっという音が聞こえてくるほどに
力まかせに剥がそうとしてくるのだから。。。


「痛い・・・聞きたくない!!!」


はがされたと同時に私はビンタをかまそうとするが
流石白兵戦に長けたハンクによってすぐ阻止された・・・


「これが最期なのかもしれないんだ」



「・・・へ?」


想像とは真逆な回答に
本日2回目の間抜けな声がでた


最期ってどういうこと・・・?



「今度こそ俺でも任務遂行が困難な場所に行く・・・」


「え・・・?それって・・・・」


「俺がもし万が一生きて帰れる約束ができない、だから俺はお前と別れる決心をつけたんだ」



死神ですら死んでしまうかもしれない場所に・・・これから向かうという
生きて帰ってこれる確率は極めて難しいという・・・


「思い人っていうのは・・・・」


「・・・・は?」


つい口にしてしまったがハンクの耳に届いてしまったようだ
ハンクも想定していなかった私の言葉に少し気が抜けた返事がかえってきた


「あ・・・いや、ちがうの・・・これはその・・・」


「別れる理由がお前の他に想い人ができてって言いたいのか?それは違う」


断じて違うと彼はぴしゃりと否定した
バーサが面白がって言ったのだとしたら質が悪いけど。。。
その女性もその任務につくらしい・・・



「ごめん・・・・」


「いや・・・しっかり理由を伝えなかった俺が悪いんだ気にするな」


「ほんとだよ・・・バカ・・・」


ハンクの胸にドンっと叩けば
頭をゆっくり撫でてくれる


最期かもしれない
ハンクでさえも死を覚悟しているほどだ・・・


「私に・・・何ができるんだろう・・・・」


「笑っていろ、どんなことがあってもただひたすら前をむいて歩くんだ」


「ハンク・・・生きて帰ってきてよ・・・」


涙がとまらない
いつもなら生きて必ず帰ってくるって言ってくれるのに
今回ばかりはその約束すらしてくれない・・・

本当に帰ってこれない可能性が高いからだ・・・
ただ頭を撫でているだけだ・・・


「お願い・・・・ハンク・・・・」



「すまない・・・・」



「私・・・別れたくないよぉ・・・」



「あぁ・・・俺もだ・・・」



そういってハンクは私に口づけをして
頭をぽんぽんと軽く叩けば


「またな・・・」



任務へと足を運んでいった
無事帰ってこれることを信じて私はただ彼の帰りを待つんだ






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数カ月たって今もまだハンクが帰ってきたという連絡はない
殉職したという報告もまだない



まだ可能性はある
帰ってきたら「おかえり」っていうんだ



そう毎日そわそわして
モニターを毎日確認している



「ルナ今日もきてるの?」


「うん・・・」


「今回ばかりは、あの死神もさすがに難しいか・・・」


「そうだね・・・でも覚悟は決めてるもん・・・」



「そっか。あまり無理するなよ」


ルポが頭に手を置いた瞬間
ピコンっと機械の音がなり二人でモニターに目をやると






「ルポ!!!あ・・あ・ああ・・!」


「やったな・・・」



任務完了のお知らせだった
ハンクが生きて帰ってくるんだ・・・



すごくすごくうれしかった
二人で抱き合って喜んでいた
嬉しさのあまり涙が止まらないけれど
ただ本当にうれしかった










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無事到着したと知らせがはいり
迎えにいけば

ボロボロになったハンクがヘリから
降りてくる姿を見るやいなや


一直線に走り抱き着いた




「おかえり」



「ただいま」





END


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