たった一言で(A)
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「嫌い・・・」


昨日確かに私の前で彼女は一言そう言って
部屋をでていった


私は振られたのか?
いや、振られたんだ

ただチクタクと時計の音だけが
部屋に響き渡った気がする・・・



溜息を一つもらして
身支度し部屋をでた



今日の任務は・・・と掲示板を見上げると


「あ・・・」


聞き覚えのある声が聞こえ
ふいに声のする方をみた



昨日「嫌い」と告げて出て行った彼女だった
昨日の今日で気まずいのだろう・・・
こっちを見るなり硬直していた


声をかけるだけ余計気まずいだろうと思い
私は掲示板に再び視線を戻した



何が嫌いだ・・・
勝手に出ていき理由も不十分・・・
私の何が嫌だったんだ・・・



任務の内容など頭にはいらず
自分らしくないと思いつつも
頭の中でめぐるのはそればかりだ


「・・・・ルナ」



名前を呼ぶが返事はなく
さきほどまでいた場所に顔を向けると彼女はもういない


「・・・・はぁ」


いないのなら仕方がない
掲示板をもう一度見通した



「アルファリーダー、今日の任務よろしく」


「あ、あぁ」


急に女の声が聞こえ体がすこし跳ねたのが自分でもわかった

「私はフォーアイズ、別所属部隊に同行できるのは光栄だ」


「あぁ」


こいつはたしか、ベクターのところの・・・
U.S.S部隊には変わりはないがウルフパックはあのメンバー内で
動くことがほとんどだ、我々と同じ任務につくことはめったにない


「あぁ・・・サンプル回収が楽しみだ」


任務はサンプル回収ではない、だがこの女は任務の内容より
自分のコレクター魂っていうやつが先に暴走しているらしい・・・
だからウルフパックに所属している。あそこは問題児しかいなからな・・・
だが能力値は高いグループには間違いはない



「目的は証拠のせん滅だ、目的を忘れるな」


「はいはい」


やる気のない返事を聞き溜息しかでず
スタスタと待機室へと向かう


「アルファリーダー、ルナと別れたのか??」


「・・・・・・・」


ピタリと足を止める
なぜ、なぜこの女が知っている・・・ルナの知人だったか?
いや、なぜこのタイミングで聞く


「やはりか・・・朝ルナから聞いていた、何かの冗談かと思ったんだが」


冗談?あいつが冗談を言うたちか?
否、あいつはそんなくだらないことはしない


だがなぜ今なんだ・・・
なんで今なんだ・・・


「すごい動揺っぷりだな、死神と呼ばれた男とは到底みえない」


「フォーアイズ、お前は私を茶化しているのか?」


「そうではないというのは嘘になるな、ただらしくないな」


そう言いマスクの紐を締めると
私をあざ笑うかのように鼻で笑った


私はルナに何かこれといったことはした記憶はない
デートもキスもろくにしていない
任務ですれ違いで会えることが少ない

すくなくともそこらへんの傭兵より
依頼される任務の数が多い
いくら掛け合っても休暇は必要以上にはもらえない




「どうした、自分の無神経さに気づいたか??」


「はぁ・・・一体お前は私に何が言いたい」


「傲慢」


「は?」


ただ一言傲慢だと言われた
私が傲慢・・・傲慢だと?


「ルナを見下した言い方をしたのだろう?さすが戦場で戦いぬいて周りの評価も高い
それに任されるSランク任務なんてちょちょいのちょいだ」


「・・・」


「ただ椅子に座ってインカムをつかい安全に場所にいるルナが楽な仕事だと思ったんじゃないのか?ルナが「疲れた」と一言つぶやいて嫌味をいったんだろう?」


フォーアイズの言うとおりだ
私は「疲れた」と文句たれたときに「ただ椅子に座ってるだけだろう」と言ってしまったんだ


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「ただ椅子に座ってただけ?は・・?」


「そうだろう?いつも安全な場所で私に比べたらまだマシだろ」


「そ、そりゃハンクと違って安全な場所かもしれないけどさ・・・」


「いちいち口にすることでもないだろう、風呂でもはいって寝ればいい」


ガタンッと強く机を叩いたかと思えばルナはボソリと

「・・・・そういうとこ嫌い・・・」


とつぶやいたが当時は私は何も気にはしていなかった


「・・・・嫌い」


再び「嫌い」
そう言ってアイツは出ていった


私のあの一言で「嫌い」といったのか?

それともなにか腹の中にしまっていた何かがあったのか?
あの一言で地雷をふんだのか?私は



「死神らしくないな」


「意味を分かって言っているのか」


「さぁな、任務までまだ時間はあるルナのところにいけばいいんじゃないか?」


何を思ったのか考えるより先に
ルナのいる場所へと足早に向かう


任務遂行第一ずっとそればかり忠実に従っていたが
自分のため誰かのために一直線でいくのはこれが初めてだ


たった一言で関係が終わるなど
私は断じて認めてはいない、ただなぜ嫌いだと言われたキッカケを
私は忘れていたのだ・・・


傲慢・・・そうかいつしか私は
周りに頼られどんな任務でも成功させていたおかげで
出来ない者を見下してきて傷つけてきたのか


「ルナ」


「・・・あ」


インカムを外そうとしていたルナをみつけ
名前をよびかけるとこちらに振り向き間抜けな顔をみせた

チョイチョイと手のひらで招くと
ルナは首をかしげながらこちらにきた



「どうしたの・・・任務があるじゃない」



「ルナ、すまない私が無神経なことをいったばかりに」


「・・・・え」


するとルナの顔は一瞬私のほうをみたが
すぐ下を向いてしまった


「おまえは私を嫌いになったのかもしれない、だが謝らせてくれ・・・すまない」



「・・・・じゃない・・・」


「ルナ?」


「嫌いじゃない・・・・全然嫌いじゃない・・・」



そういってルナは私にしがみついて泣き出した
私が謝りにきたはずがルナにひたすら「ごめんなさい」と謝られた


頭をそっとおきなでてやると
しゃくりあげてたルナは徐々に落ち着きをもどしてきた



「私でいいのか・・・?それでいいのか?」



「うん・・・ハンクじゃなきゃ・・・わたし・・・・」



少し安堵した
やはり嫌いで元の関係には戻れないと言われたら
私はしばらく立ち直れなかっただろう


フォーアイズがいなければいまごろ
任務遂行のためルートの確認目標の確認をしており
任務にでていっただろう




無意識だったにしろ
自分と他人を比べ自分以下だとつい見下してしまったようだ・・・
私はアイツの言う通り「傲慢」だったのかもしれんな








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