満員電車
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いつもはバス通勤な私は電車を利用する機会が
少ない、ましてやこんなラッシュ時期になんて
1度も利用したことがなかった・・・



駅のホームにはたくさんの人だかり
こんな人数が、電車に入りきるのだろうか・・・
でもこれを逃せば私は間違いなく遅刻だ。


「あれ?ルナ?」


「あ・・・フィン」


そこには同期のフィンがたっていた
そういえば。電車通勤だと聞いていたなぁ・・・
毎朝人ごみに押されながら通勤してるのか・・・


「珍しいね、今日電車なんて」


「寝坊しちゃって・・・えへへ」


他愛のない話をしていると
電車が走って停車をすると
ゾロゾロと人が電車に乗り込んでいく

私もゆっくりと乗り込もうとするが
後ろの人たちにグイグイ押されもう勝手に前へ進んでる
状態になる

気づけばすぐそばにいたフィンの姿が見えない
キョロキョロする暇さえもない・・・

正直・・・きつい・・・
前から横から後ろからとにかく押されて私は
身動きすらできなかった


扉がしまると同時に私の腕は
グイっと引っ張ってくる手が見えた
しかし人だかりでソロソロという感じに引っ張られている方向に
私は動いていく


そこに腕を引っ張る人物の顔が
見えた、それはフィンだった


「小さいからミンチになっちゃうよ?」


「ちょ・・・とぉ・・・」


フィンが冗談を言うのはとても珍しい
でも、正直私は身長が高いとも言い難い・・・
その上本当にミンチにされちゃうぐらいキツキツだった


フィンと向かい合って立っていても
電車はガタンガタンと揺れ動くため、うまくバランスがとれない
周りに体をぶつけないように配慮をしていたのだが
やはり一度崩れた体勢を整えるのがとても辛く
フラフラしていると

「んぐっ・・・」

フィンに抱き寄せられる形になり
私は恥ずかしく離れようとするが、それを許さないように
腰に手を添えるフィン

「こうしてないと、ルナは倒れちゃうね」


耳元でボソっと言われ
私は今までにないトキメキを感じていた
いつもおとなしくて気弱な男の子なのに

こういう時に急に男前に思えて。。。
私の心臓ははちきれんばかりにドキドキしている

「フィン・・・」


「着くまでだから、我慢して」


その言葉に甘えてわたしは
フィンの胸に頬を寄せればギュっと腕に力が加わるのが
わかった


しばらくすると、電車は目的地まで辿り着き
ゾロゾロと降りていく人達にまみれ私たちも降りていく

体が離されてしまったけど
ちゃっかり手をギュっと握り
転ばないようにちゃんとエスコートをしてくれるフィン

そんなことされたら
私、あなたに。。。





「もうこれで安心だ」


「う・・・うん、ありがとう」


「いいえ、どういたしまして!」



スっと手を離そうとする彼の手を
握り返すとフィンは少し驚いた表情を浮かべてこちらを
見ていることがわかる


「どうしたの?」


「・・・もうすこし・・・手をつないでいたい」


「うん、ボクは全然構わないよ」



職場までずっと手をにぎり
私たちは仲良く通勤しました。


これがキッカケで私にはついに
春が訪れたようです



---END---


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