メイド喫茶
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「ベクター・・・ここはなんだ・・・」


「ここはだな・・・」


今俺は弟子であるベクターに故郷の日本を案内してもらっている
しかしベクターも何年も日本に帰っておらず新しくなった街に動揺を隠せてない
それどころか、まともに案内すらできていないのだ・・・

喉が乾き少し休憩をするつもりで
カフェにはいったのはいい・・・カフェというものは
とても落ち着いた場所だと思っていたが
どうやら日本のカフェは騒がしいようだな・・・

そして周りを見ると
若い女がフリフリの短いスカートをはいて・・・


「あの、ご主人様。こちらが本日のメニューとなっております」

なんだろうな・・・いつから俺に使えるようになったんだ?
俺はこの女達はしらん・・・


「ご主人様というな・・・俺はお前の主人でもなんでもない」


そう言えば彼女は困った表情を浮かべる
それは申し訳ないとは思うが事実だからしょうがない・・・

「ベクターここはどうなってる」


「俺も・・・知りたいぐらいだ・・・」


はいっていった当本人もここがどういう場所なのかを
把握していない様子だ・・・
しかし、腹は背に変えられないと言い出しベクターはオムライスを頼んでいた
メニューをみればオムライスしかない・・・
仕方がなく俺もオムライスを頼むことにした


すると。テーブルにオムライスが届き
ケチャップもなにもついていない・・・なぜだ・・・


ケチャップを頼もうと彼女の方をみれば
ケチャップを持ってるではないか・・・
なんだ・・・あるじゃないか・・・


だが・・・このあとに起きることに
俺はただ驚くことしかできず・・・当然ベクターも驚いていた

「さぁ、ご主人様!オムライスに何を書きましょうか?」


すると、ねちっこくしゃべる女が笑顔になり
ケチャップのフタをあけオムライスに何やら書く準備をしていた


「・・・・」


「ご主人様?」


「適当に・・・」


「適当じゃダメですよぉー!私からの愛情たっぷりのおまじないなんですからぁー」

なんだこの店は・・・愛情たっぷり?
何を言っているんだこの女はアホか・・・いや、こいつは本気だ
その目は本気だ・・・名札に目がいき彼女がルナにゃんということを知った
にゃん?自分の名前のあとににゃんだと?・・・


「・・・」

「ご主人様、お名前はなんですか?」

「ハンクだ・・・」

「ハンク様ですね!じゃぁー私の愛情オムライスにそそぎますねぇー」


おい・・・何を書くのか俺に聞くんじゃないのか?

おいおい・・・何書いてるんだ!!


「はぁーい、でっきあっがりー」

なんということだろうか・・・
人生こんな屈辱があったものだろうか・・・
するとベクターがこちらを見ていることが視線でわかった

すると肩がフルフルと震えているのが見える・・・
笑いをこらえているんだろう。。。

無理もない・・・


そのオムライスの上には


「ハンクにゃん(はぁと)ルナにゃん(はぁと)」

と書かれていたわけだからな・・・
ベクターに関しては


「健康」と書かれていた・・・
普通すぎるじゃないか・・・なんだこの仕打ちは!


「はぁーいとても美味しいのでたぁーんと召し上がれぇ〜」


「・・・・・あぁ」


なにもなかったかのように俺はスプーンで
ケチャップをのばしオムライスには何が描いてあったのか
わからないようにする


「なにもそこまでする必要ないんじゃないか??」

「うるさい」


さっきまで笑っていたベクターがふいに
真剣な表情で言うが・・・
これ以上の屈辱はない・・・となりに立つルナを
無意識に俺は見ていれば

少しなんだか悲しそうな表情を浮かべていた
ベクターの言うとおり俺はやりすぎたのかもしれん・・・
これは仕事で、なにも決まらないお客にはこうしているのかもしれない
そう思うと俺はやるせない気持ちでいっぱいになる


「すまなかった・・・もう一度オムライスを頼む」


「いえ・・・いいんです」


すると涙を浮かべながら彼女はどこかへ行ってしまった
こんな風になるとは俺もおもっていなかった
たかがオムライス・・・そう思っていた



「マスター・・・実はここに連れてきたのは彼女にマスターを紹介したかっただけだ」


「なに?じゃぁここがどういう場所か分かっていたということか?」


「いや・・・それは俺もわかんなかったさ・・・」


紹介したかった?なぜそれを早く言わない
なぜベクターの友人をこの俺が傷つけなければならない・・・


「さっきの女はルナっていうんだ・・・俺がマスターの話をしててな?会いたいっていうから・・・」


「そうだったのか・・・それはすまないことしたな・・・」


「いや、言わなかった俺が悪い」


周りの騒いでいる音がやけに静かに思えた
友人としっていたならば・・・こんなことしなかったとも言えないが
少しは気を遣う。


「とりあえず俺呼んでくる、マスターは食べててくれ」


ベクターが席を立ち
彼女のいる方へと行くと俺は赤く塗りたぐられた
オムライスをスプーンですくい食べる



「マスター・・・」


そこへ、ベクターとルナが現れた


「先ほどはすまなかった・・・悪気があったわけじゃない・・・」


「ごめんなさい・・・気を悪くしないでください・・・」


それでも彼女は笑おうと必死なのがひしひしと
伝わってくる
悪いことをしたのは俺だというのに


「ベクターからハンクさんの活躍とか色々聞きました・・・」


「そうだったのか・・・」


「それで一度お目にかかりたいって・・・ベクターに聞いてみたの」


それで急に日本を案内すると言い出したのか・・・
すべてに合点がいく



「改めていう、俺はハンクだ・・・」


「私はルナです・・・いつもベクターがお世話になってます」


「おい、お前はいつから俺の母親になってんだよ」


さきほどの悲しげな表情とは違い
ルナの表情は明るく笑顔になる、笑顔の似合う女性は俺は好みだが
これまでに笑顔が似合う女がいただろうか・・・


「素敵な方ですね、会ってみて正解です」


「ルナ、狙うならいまだぞ?マスターこうみえて女いねぇから」


「ベクター余計なことを言うな」


まったくといったところか、ベクターはいつも余計な一言が多い
だが、俺もこんな気持ちは初めてかれもしれん・・・

ルナもベクターの一言に頬を赤く染めていた
俺は自惚れてるのだろうか?


しかし・・・彼女がこんな
鼻の下をのばした男の客ばかりいる職場で
働いているとなると色々心配だな・・・

だからといって俺は止める権利はどこにもない


「しかし、騒がしい場所だな・・・ここは」


「メイド喫茶はこんなものだよ・・・」


「変な虫は寄り付かねぇか?こんな場所で働くと」


「そうだね・・・何度も口説かれてるけど、全部断ってるよ」


やはり彼女みたいな可愛らしい女は
鼻の下伸ばしてデレデレしてる男が寄り付くわけだ・・・
だが、彼女が取られてしまう可能性は無きにしも非ずだ

だが、今出会ってばかりで
好きだと言えばこいつらと同じだな・・・


ルナを取られないようにするには
どうしたらいいのか・・・


「あの・・・ハンクさんがよろしければでいいんですけど」


「ここで働いてる間でいいんです・・・恋人の役頼んでもいいですか?」


後ろでベクターが笑っているのが目に映る
あいつがなにか吹き込んだんだな?すぐにわかる

だが・・・悪くもない・・・
そこから発展していくかもしれないわけだ・・・


「わかった・・・」


「ありがとうございます!」


こんな場所で抱きつかれれば
周りの男どもからブーイングをくらう

「俺のルナにゃん」だとか色々鳥肌がたつ言葉を吐き捨てる
男共ばかりだ・・・
だが・・・いい見せつけでもあるよな


---END---



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