愛に振り回され
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「おい、ベクター」


机に向かって情報処理などをしているスペクターは
近くを通りかかったベクターを呼び止める


「なんだよ」


「いつまでルナの尻にしかれてんだ?」


「・・・しかたないだろ、惚れた弱みだ」


ククっと喉で笑うスペクターに対して
ベクターはポリポリと頬を掻く
ベクターはルナに惚れて思いが通じ晴れて恋人同士になれた

「噂をすれば影のようだぜ?」


クイっとスペクターが指を指す方向を
見やるとそこにはルナがこちらに手を振っている
それを見るやベクターもルナに手を振れば
満面の笑みが返ってくる


それが嬉しいのかベクターは
つい口元が緩む


「ベクターこれからお茶しない?」


「あ、あぁいいぞ」


「おい、ベクターまだ仕事が残ってるぞ」


「いいんだ、ルナが拗ねるから」


仕事よりも彼女を優先するベクターに
ルポはため息をもらす
その様子にスペクターはまた喉を鳴らす


「ベクター、主導権を女に握らせてると男がすたるぜ?」


「どういうことだよ」


「リードできねぇ男っていうのはヘタレがすることだいい気にさせてっといずれ痛い目に合うぜ?」


意味ありげな言い方をするスペクターに
ベクターはイマイチ分かっていない様子
ルナの可愛さあまり甘やかしてしまうベクターに「忠告したからな?」とスペクターは
ベクターの背中を押しそのまま
ベクターはルナの元へと進む


「どうしたの?はやくいこ?」


「あ・・・・あぁ」


しかしスペクターに言われたことが
ひっかかり思うように笑えず引きつっていると
ルナはその表情を不思議に思ったがすぐさま
近くのカフェへとベクターの手をにぎり進んでいく


「随分と洒落たカフェだな・・・」


「でしょ?いつかベクターと行きたかったんだ!」


ウキウキしてはしゃぐルナ。
ベクターは店内をぐるりと見回しながら
席につく


それぞれ好きな飲み物を頼み
口にすると

「あのね、ベクター昨日経理の女の子がさ・・・」


こうしてルナの身の回りで起きた物事を
ベラベラとベクターに話をし
黙ってそれを聞いているベクターはうなずいたり笑ったり
様々な表情を浮かべる


「でね?その子ったらベクターのことが好きなんだって」


「そうか」


「ベクターは私のーって言ったらさ、とられたー!とか大声で出しながら笑ってるのよ」


「コメディドラマかなにかか・・・」


ケラケラと笑いながら話すルナと
過ごすこの時間が幸福なのだろう
口元は緩みっぱなしだ


「あ!そうだ!今日このあとセールなの!あそこの店行こうよ!」


「お、おう」


洋服やらカバンやら
セールがあるらしくルナは話の途中にそう切り出し
いけないいけない!と慌てて飲み物を飲むと
ベクターもそれにつられてグイグイと飲み干す


「ほら!出遅れちゃう!」


「おいおい・・・」


慌てて席をたち
会計に向かい済ませるとそのまま
ダッシュでデパートへと向かう


「・・・仕事」


ボソっと言った言葉はルナには聞こえず
ベクターはある意味焦っていた


「わっこのセーターかわいい!お、このスカートもいいなぁー」

人ごみの中ルナはしっちゃかめっちゃかになりながらも
マイペースに衣類をあさりカゴへとボコスカ入れる

そのあとは、カバンや靴
時計にアクセなど3時間もかけて走り回り
ようやく買い物がすべて終われば


「ベクター・・・ごめんね、こんなに荷物もってもらって」


「いや・・・いいんだ・・・・」


「それに・・・払えなかった分というか全額払ってもらっちゃって」


「いや、それも構わない」


前が見えないぐらいの包装紙に包まれた箱やら
紙袋などとにかく半端じゃない量の買い物袋を担ぎ
ルナの家へと歩いて向かう


ようやく家に辿りつき
荷物をドサっと置くと


「大量だな・・・さて俺はこのまま仕事に戻る」


「え・・・もう行っちゃうの?」


さみしそうな目で見つめながら
服の裾を持つルナに「・・・・帰りたくない」そう思いながらも


「すまない・・・仕事を途中で放りなげてるんだ」


「・・・やだ」


「やだじゃない」


「やだ!一緒に居て!」


だだをこねはじめるルナに
ベクターは心を鬼にできるのかそっちでの格闘が始まっている
ルナはずっとベクターの裾を持ったままだ


「・・・・1時間・・・待てるか?」


「やだ・・・30分」


「・・・・わかった、すぐもどるから」


30分で仕事をやりこなせるか不安だが
約束した以上やるしかないと決め、さっさと仕事に戻る



「遅かったじゃないか・・・ほらレポート500枚あるぞ」


ルポに鬼のような紙の量を
ドサっと置かれベクターは一気に青ざめる


「30分でやりきる!!!!!」


「忠告しただろ・・・」


ペンを持ち、すぐさまとりかかる
皆が邪魔しにきたものの集中力が半端じゃない
ついに30分いや25分でやりきり、ルポの机に提出しそのまま全力疾走で
ルナの家へと走り出す



「ルナ!!!」



「あ、ベクター!!」



息を切らしながら
ルナの家のドアをガチャンと勢いよく開ければ
寝巻き姿のルナが立っていた


「寝るところだったのか?」


「うん、もう寝ようと思って」


「・・・・・・・そうか・・・そうだよな・・・」


「ごめんね。おやすみ!」


「あぁ・・・おやすみ」


なんのために仕事を頑張ったのか
苦労も台無しにされベクターはとぼとぼと自分の家へと
帰っていく


「振り回されてるな、ベクターのやつ」


ククっと笑いながら肩を落として歩くベクターを
双眼鏡で眺めるスペクター



---END---


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