いきすぎた嫉妬は気持ちの行き違い
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私の憧れの人は自分の師範で死神と呼ばれる男
兄弟子のベクターも憧れでもあるのだけど
マスターのことが好きで堪らない。

でも、望まれない運命
マスターは女を取らない主義
女遊びなど一切しず常日頃任務のために

休日もトレーニングを欠かさない
それに比べ私は休日を満喫している
ベクターも同様に休日は満喫するほうだと言っていた

休日だというのにトレーニングをしている
マスターを覗けば私の心臓は鼓動をはやめる


「・・・すごいなぁ・・・」


話しかけるのは邪魔だと思い
窓からずっと覗いているけどこちらに気づく様子はない
視界にはいってたら「お前もトレーニングをしておけ」と言われるだけだし・・・
前回がそうだった・・・マスターがつける訓練は鬼のようだ・・・

一時期「鬼教官」などと言ってトレーニング種目を倍にされたっけ・・・
ベクターにも飛び火が周り、迷惑かけたっけか・・・
あの時はベクターにおごれとばかりせがまれたし・・・今を思えば
苦い思い出である


「ルナか・・・」


ふと声がして振り向けば
ベクターが立っていた


「なんだ・・・びっくりした」


「なんだとはなんだよ」


「マスターに気づかれたと思っちゃったよ」


「なんだそれ」


思わず苦笑するベクターは私の隣に座れば
頭にポンポンと手を置かれる始末

「鬼教官だからな?見つかればどうなるかなんて俺でも分かる」

あ、全部お見通しなのかこいつには
さすが兄弟子だ、マスター同様お見通し?

まぁ、いいや・・・


「休日はいつもマスターを眺めてるのか?」


「うーん・・・今日は特に予定もなかったし、覗きにきただけ」


「一緒に訓練すればいいじゃないか」


「マスターの訓練は辛すぎる」


想像するだけで冷や汗ものだ・・・
こんな私がマスターの弟子がつとまってるのが
不思議なぐらいだ


「まぁ、俺は平気だけどな?」


「ベクターは男だもん」


「女だって強いやつはいくらでもいるだろ?」


「・・・まぁ・・・」


まぁ、弟子にしては弱いから正直いって
マスターの顔に泥を塗ってるようなもんなんだけど・・・

「お前があの死神の弟子?冗談だろ?お前が?」そう言われ続けてたわけだし
実力もそんなにあるわけじゃないから

「ルナは体力がないが素早さはずば抜けてる、暗殺なんてマスター以上だろ?」


「それはわかんないけど・・・」


でも、認めてくれる人物がいるだけで幸せかな
マスターはどう思ってるのかわかったもんじゃないけど・・・


「お前たち・・・・」


「あ・・・マスター」


「もう訓練終わったのか?マスター」


急にマスターが現れるものだから
心臓がとびきりうるさい・・・びびった・・・


「あぁ、そこでなにくっちゃべってる」


「訓練の邪魔でしたか・・・すいません」


「ルナ・・・こっちにこい」


「え・・・はい。マスター」


あぁ、どうしよう・・・マスターのトレーニングは恐ろしい・・・
怒らせてしまったから尚更・・・

ベクターのほうに振り向けば
親指を立てて笑っていた・・・

どういうつもりなんじゃボケェ!と言いたいところだけど・・・
マスターが恐ろしすぎてそんな気分にもなれない



「ルナ・・・ベクターと何話してた」


「え?どうしてですか?」


「質問に答えろ!!」

トレーニングルームに入った瞬間に問われ
なぜ話を知りたがってるのかが分からず・・・

質問にすんなり答えない私にむけて
壁をドンっと殴りつけ怒鳴るマスター


正直にいって・・・怖い


「えっと・・・」


「さっさと答えろ」


やっぱ怖い・・・
ベクターとの会話は特にこれといった内容は話してないんだけど・・・
下手なことを言えば・・・ベクターに何をするのかがわからないし・・・


「自分の腕前について・・・話してた」


「嘘じゃないだろうな?」


「・・・はい」


「・・・・」


無言が怖い・・・


「なぜ目をみて話そうとしない、人と話す時はちゃんと目を見て話せ」


「はい・・・マスター」

目を見ると鋭い目つきこちらを見るマスターが
怖くて今でも泣きそうになってくる・・・
嘘はついてない・・・ついてないのに
いたたまれなくなる


「なぜ涙を浮かべる」


「・・・・なんでもないです」


「私が怖いか?」


「いえ・・・」


怖い・・・なんて言えたものじゃない
言わせないためにしてるようにしか見えない・・・



「ベクターとは腕前の話をしてただけなのか?」


「はい、ベクターに確認をとればわかると思います」


「・・・あいつはいい」


どうしてなのだろう・・・私だけを叱りつける理由がわからない
もしかして目の敵にされてるとか?
それとも私がマスターの顔に泥を塗るような腕前だから?

いずれにせよ、自分の情けなさが
悔しく思う・・・



「私が。。。未熟だからですか?」


「何の話だ」


「マスターは。。。なぜ私を叱りつけるのですか」


「・・・・」


「質問に答えてください・・・」

都合の悪い時になると
なぜ黙るのだろう・・・私には話せない理由なのだろうか・・・

なぜベクターがよくて、私にはダメなのだろう
その理由は知っておきたい


「ベクターを贔屓してるの?私は・・・できない弟子だから?」


「あいつの名前を口にだすな」


「なぜですか!あなたの弟子でしょ?私の兄弟子なんですよ?」

まったくもって意図がつかめない
ベクターだけが特別扱いなんて。。。私にとっては苦痛なのに


「マスターのこと憧れていてそれでいて好きだったのに・・・もうあなたの下で働くのをやめます・・・」


「おい、待て!」


もう、いいの・・・これでいいんだよ
好きだから辛いんだ・・・だったら目の前から消えれば
きっと気持ちも晴れるしこんな惨めな思いもしなくてすむんだから・・・


「待つんだ!」


待ってたまるものですか・・・
ベクターはあの時親指たてて笑っていたけど
どうしてなのか未だ理解できないでいるけど・・・

全然いい方向にはすすまなかったんだ・・・


扉を開ける瞬間に腕を掴まれて
思いっきり引っ張られマスターの体が視界に映ったかと思えば・・・


「・・・んぅっ?!!・・・・」


無理やり口を塞がれ、息をしようと口を開けてしまい
舌の挿入を許してしまった・・・

だけど、何とかしてマスターから離れたい

なんでこんなことをするのか
まったくといって理解できない


「ふ・・・・んっ・・・・」


腕をマスターの体を押すが
ビクともしない・・・それどころか
後頭部をがっしりホールドされて余計に身動きがとれない・・・

長い長いキスに
頭がクラクラする・・・本当なら
大好きなマスターとキスできるのはとても嬉しいはずなのに・・・

今はそんな気分にもなれない・・・
もう流石に息ができない・・・手をトントン叩いても離す気配もなく
舌を噛んでやろうと顎に力をいれる瞬間にはなされ・・・ガチっと歯がなる・・・



「は・・・はぁ・・・・どう・・・いうつもりなんですか!」


「・・・すまない・・・私としたことが・・・」


「いい加減にしてください・・・」


やっぱりマスターの意図がわからない・・・


「ルナがベクターと仲がいいことに嫉妬しただけだ・・・いきすぎた・・・すまん」


「・・・・」


え?今なんていったのこの人は・・・
嫉妬?任務ばかりトレーニングばかりのこの男が嫉妬?
正直いって信じられない一言を発したことに私は驚いて何も言えない



「お前はベクターばかり名前を出す、気持ちを抑えられず・・・すまなかった」


「マスター・・・」


「ルナは私を好きだと言ったな?・・・それを知らず私は・・・」


なんだろう、恐怖感は感じられなくなり
目の前の男が可愛く思えてくる・・・今までの感情がまるで
嘘のように・・・


「だが・・・もうお前に嫌われてる以上言う資格などないな」


「・・・資格は・・・十分あります」


やはり嫌いになりきれないのは
ずっと好いていたからなのだろうか??


「こんな私だが・・・ルナ好きだ」


「私もマスター・・・否、ハンクが好きですよ」




でも・・・あのマスターが恋愛に手を出すなんて
誰もが思わないだろうなぁ・・・


私も・・・その一人だったわけだし・・・
ベクターはあの笑顔と親指はこのことを示していたの。。。?


結局それだけは謎に終わった


---END---









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