一応義理だけど、
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 「なんで女子まで貰わなきゃならないんだろーね」

 「レズが集まってるんじゃないの」

 「とんでもない事言うなよー」

 午後五時半を回り、日もちょっとばかり沈んできた頃、そんな暢気な会話を交わしながら一組の男女が歩いていた。

 「鞄の中がチョコ臭いのは嫌なのよ。……なかなか落ちないのがネックっていうか」

 「ふぅん」

 男の方は、特に興味がないように素っ気ない返事を返す。
 彼の名は鶴喰鴎。
 女の方の名は、零という。

 「どーした白けてるねー」

 妙に間延びした声で零が言うと、鶴喰は少女に顔を向けなければ目も合わせる事無く、静かに口を開く。

 「別に私は君がチョコレート云々の話をしている事に大人だから口出ししたりしないけれど、流石にその話ばかりだと聞いてる私だっていくら大人といえども飽きるんだよ。何も君が子供だからとか言ったりはしない、絶対にしないけれど―――」

 「あーもう面倒な奴……」

 文句が長いんだよあんたはさー、と零は呟いて、何やらごそごそと鞄の奥の方を漁る。

 「ほら、これ私から」

 零は何処か気恥ずかしげな笑みを浮かべて、鶴喰に縦長の、掌に乗る程度の大きさをした箱を差し出す。
 それなりの装飾がされているといえばされているが、包装紙を箱に巻いただけのような、そんな杜撰さがなんとなく窺える。

 「言われなくってもあげるよ?」

 「……」

 きょとんとした鶴喰の目の前で、零は首を傾げる。

 「一応義理だけど、どーしたのさ」

 「そうあっさり言える君は希少だよね」

 箱を受け取って、呆れたように彼は溜息を吐く。
 打って変わって零は良くわかってないとばかりに、

 「は? 何が?」

 「別に」

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