こんなに食べて平気なのかこの子
「おうふ……」
目の前で起きている奇妙な状況に、取り残されている事を私は感じていた。
私の視線の先にいるのは、不知火半袖という、水色の髪の少女である。
見た目だけならかなり可愛い。
可愛いのだけど、彼女がおかしい。
何がおかしいって、彼女が食べている食いもんの量である。
彼女の前には、もう何十皿というからの皿が積み上げられている。
素晴らしい、ある意味アートだ。
素晴らしいっちゃ素晴らしいけどね、色々問題なのはね。
実は私は彼女の向かいの席に座って、食堂の美味しいご飯をもさもさと食べているわけなのだけどね、半袖ちゃんが食べ終わった空皿が、こっちににじりよってきてるんだよ。かなり地道にだから、今の今まで本当に気付けなかったけれど。
「あひゃひゃ、ごめんねー☆」
「いや別に良いんだけどね」
なんて返せば、再び咀嚼を始める不知火半袖。
という我がクラスメイト。
人吉善吉は珍しくこの場にいない。大方あの生徒会長に振りまわされているのだろう。
元気というか、よくやるよな人吉。あいつの人間関係がかなり気になる今日この頃だ。そういえば彼の友達という人間関係内には、この子が親友として組み込まれているのだったか。随分と変人に好まれる普通人である、人吉善吉よ。
「零、そのうどん食べないんだったら、全部あたしに頂戴」
「だぁめ!」
私は半袖ちゃんという、食欲モンスターから自らのご飯を死守するべく、目の前にある湯気をたたえた熱々のうどんを一気にすする。
「あっつ!」
「あひゃひゃ☆」
と、楽しそうに笑い声をあげる半袖ちゃん。
舌が火傷したかもしれない。まったく、失敗したなあ。
「うあ」
「残念☆」
なんだか負けたような気がするのは、気のせいだろうか。