prologue
これは、決して救いのない物語。
護りたい物が有ろうが、譲れない物が有ろうが、救われず報われない物語。
求める物さえない話。
例えそうだろうが、私は今も昔も変わらない。
「昔っからその性格だぁ? 難儀な奴だな」
「変わらないんですもん。仕方ないじゃないですか」
団子を食う。
私は、この土地で生きているから生きている。目的もなく、ただ仕方なしに生きている。
私には大事な物が有る……いや、有った。
―――何百年も前から、見た目も何も変わらない、人と呼ぶのはおこがましいような並はずれた達だけど。
彼らにはもう、会う事はないだろう。
皆の事は大好きだったけれど、私はもう彼らとはいられない。私が人なら、彼らといられたかもしれない。だけど、私はもう違う。
だって、私はもう人間じゃなくなっちまったから。
元々人間って言い切れる存在でなかったにせよ、今や完全に人ではないのだ。
こうなってしまったから、私は彼らといる事は諦めた。
人間は、何かを得るたびに何かを捨てなければならないという。
二度目の生を得た私が捨てたのは、彼らとの関係だ。
「……これで百三十歳以上、っつーから不気味だよな。ぱっと見ただのガキだってのに」
「あはは、そういうこともあるんですよ」
百何十年と生きたところで、人はあまり変われないように。
私だって変わらない。性格も口調も、何一つ変わっていない。
長生きしても何も変わらなかった私だけれど、たった一つだけ変えた事がある。いいや、変えたいと思っていることがある。
今迄後悔ばかりだったのなら、今度こそ後悔のないように。
やりたい事をやって、満身創痍で死ねれば本望だ……そう考えるようになった。だから、私はそう変わりたい。悔いの無いように生きてみたいんだ。
私は、妖怪として生きる。
人であれなくなったなら。というか、そもそも人間と言っていいのか怪しいけれど。今の私は、取り敢えず生きるしかないんだ。だから、今度こそ。
もう一度与えられた生を、今度こそ。
―――悔いのないように、生きていこうと決めた。
それが、どんな結末に終わろうとも。