舞われまわれ | ナノ







「うーん、やっぱりヒールはなれない」
「今後のために普段から慣れておくんだな」
「はーい」

プロシュートと私はまた招待客として会場内にいる。
どうやらリーダーはガードマンにまぎれたらしい。
向こうの壁際に立っているのが見える。

私はプロシュートから離れ会場内を見渡す。
同じくらいの女の子は矢張りいないようだ。
目立ってやしないか心配だが言われたとおり、『親に連れてこられたはいいが放っておかれてつまらなそうにしている子供』を演じるとする。

といってもボーっとしてるだけなんだけど。

暫くして、女の人にまた囲まれているプロシュートを観察してると耳のスピーカーから声が聞こえてきた。
「こちらソルベ。ターゲット会場から出て上層階に上がっていく。やっぱりなんかの受け渡しのためのパーティーだなこれ」
確かに気付けば一部の黒服とお偉いさん達がいなくなっている。

「こちらジェラート。リーダー、陽動開始するけどいいか?」
「構わん」
最低限の一言、しかしこれが始まりの合図となった。
「了解」
楽しそうなジェラートの声とともに通信が切れる。

陽動って何するんだろうなーなんて暢気に考えていると、窓の外から爆音が聞こえた。

爆風で会場のガラスが割れ一瞬にして招待客はパニック状態になる。
「やりすぎでしょ…」

呆気に取られているとプロシュートに肩を叩かれた。
「おら、ボサッとすんな!置いてくぞ!」
「あ、待ってよ!」
既にリーダーの姿は見当たらなかった。