舞われまわれ | ナノ







「ただいまー!」
「お帰りー、あれ、手ぶら?買い出し行ったんじゃないのか?」
珍しくリビングにイルーゾォがいた。
「荷物もちを捕まえたのよ」
「は?…あー。ホルマジオもお帰りー」

私の背後から現れた荷物を抱えたホルマジオを見て納得したようだ。
「お前、明らかに菓子のほうが多いだろ、何だこの量。俺菓子にあんな金払ったの初めてだぞ」

彼も大量のお菓子を奢らされるとは思っていなかっただろう。
私もちょっと調子に乗って買い過ぎた自覚はある。
ホルマジオが下ろした紙袋の一つからチョコを取り出しイルーゾォに投げた。

「特訓のお礼ー!」
「お前人へのお礼のものを他人に買わせるなよ」
「人の夢見る心をもてあそんだ罰よ!」
「何々、ホルマジオがマキナの体を弄んだって?」
「何処から出てきやがった」

ぬっと現れたメローネを見ると顎のシップに目が行った。
あれまぁ。
「はい、メローネにも。手加減できなくて悪かったわね」
帰り道途中で空けたキャラメルの箱から一個取り出しメローネに渡す。
一箱あげないのはこのキャラメルが予想外に美味しかったからあげるのが惜しいということもあるが、彼にも非があるからだ。
決して余りにも美味しくて、それでもともと一箱あげるつもりが惜しくなったんじゃない。決して。

「グラッツェ、マキナ!飴と鞭って奴か」
そういいながら彼はポケットへそれを突っ込んだ。
確かにもうすぐ夕飯だ。
今からお菓子を食べるのはよくないな。
それにしても一言多い。
私は袋から出しかけたキャラメルを包みなおし箱に戻した。

「今日の当番誰だっけ」
「プロシュートだろ」
「やった!」
彼の料理は格別だ。

私は買って来た一部のお菓子を台所に運ぶついでにどうやってつまみ食いをするか思考をめぐらせた。