舞われまわれ | ナノ







マグカップを二個持ってリビングに戻るとギアッチョとメローネはまだいた。
なんだかんだで仲のいい二人は今もソファで隣りあわせで座っている。

私に気付いたメローネが少しギアッチョのほうにつめる。
そこに座れと言うことか。
断る理由もないのでそこに座ることにした。
するとごく自然にカップのひとつが奪われる。

「え?」
「ん?」
飲んでるし。
「それ私のなんだけど」
「じゃあそっちが俺の?」
「いや、両方私の」
「え」
「え」
「俺が寒さに凍えていることを見越して俺の分も作ってきてくれたんじゃないのー!」
「そんなわけないじゃん、変わりの淹れてきてよ。ぎとぎとに甘い奴ヨロシク」

カップを置いたメローネが擦り寄ってくる。
私は取られる前にカップに口をつけ置き、誰かが置いていった新聞に手を伸ばす。
「マキナー」
「メローネ!てめ、離れろ!」
抵抗しないのをいいことにいっそう密着してくるメローネにギアッチョが切れる。
確かにさりげなく太ももを撫でられいい気はしない。
「メローネ邪魔。ギアッチョうるさい」
「マキナ!テメーもテメーだ!抵抗しやがれ!クソッ」
「抵抗すればするほど喜ぶでしょ」
「よく分かってる〜。でも抵抗しなくても喜ぶよ」
触り放題だしとつけたすマスクに殺意を覚える。
どうしてくれよう、この変態。

ふと思いついてメローネの頬に手を伸ばす。
「え、やだマキナ。積極、て?」
マスクを思いっきり引っ張って

―パチンッ!

「!?っつ…ってぇ----!!!!!!!!」
手を離した。
「ぶっはははははははははは!」
いわゆるゴムぱっちんである。
顔を赤くしたり青くしたりしながら静観していたギアッチョが笑い転げる。
メローネは顔に手を当て悶絶し続けている。
ざまぁみやがれ。

やっぱり甘いのが飲みたいな。
苦いカッフェなんてカッフェじゃなかったと起き出した舌に走る苦味に眉をしかめる。

メローネとっとと淹れに行ってくれないかな。