舞われまわれ | ナノ
「すみません」 部屋をノックする。 覗き穴を見ているのを気配で感じた。 こんな子供でも疑う奴は、犯罪の多い南イタリアでは少なくない。 しかしチェーン付きでも何でも扉を開けてもらえないと面倒だ。 そのための下着である。
「…誰だアンタ」 暫くしてドアが開いた。 チェーンをかけていない所を見る限り、不審に思われてはいないようだ。
「えっと、その。下歩いていたら、下着が落ちてきて…上見たら貴方の部屋以外今は洗濯物干していないみたいなので、それでもしかしてと思ったんですけど。これ、違いますか?」 話しながらブレインシチューを彼の背後に導く。
「あ?そりゃどうも…だが、俺のじゃないようだ」 「えっ!?あ、それはすみません!」 頭を下げながらその影で下着を丸める。 「いや、わざわざどうも、それじゃあ」 ドアを閉めようとするのを足で防ぎ、そのまま丸めた下着を口に突っ込む。 「なっ、なん、ぐ!」 「手足を拘束してしまおう」 その場で倒れる男を部屋の中に押し込みドアを閉める。
眼の前の私の行動と急に動かなくなった自分の手足に目の色を白黒させている彼に伝える。 「カタリナお嬢様、ご存知ですよね?」 驚愕、しかし納得したようで目には早くも涙を浮かべている。
「貴方を苦しめてから殺すよう仰せつかっています」 ついでに動かなくなった彼の写真も取ってこいとも言われている。 ほんと女は怒ると怖いんだな。
「すみません、お仕事なんで」
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