舞われまわれ | ナノ







ごぽっ。
首にしっかりと刃を突き刺し、口から血が競りあがってきたのを確認してターゲットの首からそれを抜いた。
その時、噴水のように飛び散る血で体が汚れないように気をつけなければならない。
この間それで一着駄目にしてしまったので殊更慎重になる。
倒れこむターゲットが完全に事切れているのを確認して狭い路地から出た。
離れた場所から見張っていてくれたギアッチョへ合図を送る。
今日の任務はこれで終了だ。

「手馴れたもんだな」
「褒めても何にもでないよ」
「いらねーよ。…なんか食って帰るか。腹減った」
確かに、今は午前2時。
日付が変わる頃からずっとギアッチョとターゲットの出現を待っていたので小腹は空いている。
ギアッチョは万一、ターゲットをとり逃したときのために加勢しに来てくれたのだ。
この路地のどこかに逃げ込まれたら確かに困るので大変助かった。

「でも今の時間、開いてるところなんて無いよ」
「マキナ、大人っつうのは知ってる店の数で決まるもんだ。
馴染みのバールならまだやってるぜ。行くか?」
「行きたい!」
自称大人のギアッチョは私の返事に満足そうに鼻を鳴らした。切れやすい性格のギアッチョは他のどのメンバーよりも精神的に幼く感じる、という本音は言わないでおこう。
結果は目に見えている。

「よし、それじゃあとっとと行くか。繁華街のほうだ」
そこまではどんなに急いでも10分かかる。
「タクシー拾おうよ」
ここまで来るのに使った車は、途中道路の混み具合に切れたギアッチョが壊してしまった。
「それこそこの時間にいねーよ」
ネアポリスの治安は悪い。
こんな時間にタクシーなんて強盗してくれといっているようなものである。
だからこんな時間にタクシーなんていない。
わかってはいるんだが。
「…治安良くならないかしら」
「俺らがそれ言うのか。よし、適当にパクるぞ」
「あいあいさー」
こうしてまた一歩、ネアポリスの治安は悪化していくのである。