舞われまわれ | ナノ







「終わりましたよー、先輩?」
机の上にブラックコーヒーを二つ置きながらたっぷり嫌味をこめて言う。ドラマのほうは少し進んでいた。間に合わなかったか。
でもついていけないことは無いのでそのまま見続ける。
「苦しゅうない、はい、あーん」
「自分で食べれるんだけど」
フォークごとケーキをひったくる。
「乗り悪いー」
「残りいいの?」
「うん、飽きたー」
「そう。美味しいね、ありがとう」
予想外に美味しい。本当にメローネが作ったのか疑いたくなるくらいだ。
「どういたしましてー。褒められちゃった」
誰に報告してるんだろう。しかし確かにこの甘さはブラックコーヒーが無いと辛いかもな、なんて思いながらもくもくと食べる。
「ちなみにそのフォーク、俺が使ってたんだけど」
「そう」
「そこは顔を赤らめるとかしようぜー」
「はいはい」
タルトは食べ応えがあっていい。
「ご馳走様」
「お粗末様」
食べ終わる頃には再放送は終わっていた。

「これ最終回でどうせこいつ助かるだろ」
「まぁ主人公だしね」
「おもしろい?」
「暇つぶし程度には。ヒロイン役の俳優好きだし」
「俺はもっとビッチっぽいのがいいなー」
「ははは、だろうねー」
ガチャ
「あ、誰か帰ってきた」
「そうだね」
一緒にビニール袋の音がする。
今日の夕食当番かな、…今日は誰だったっけ。