舞われまわれ | ナノ







「今度は轢死体か…」
「一体何なんだよ…誰がっ!次は…っ俺、なのかな…?」
「な、何馬鹿なこと言ってんだ!やめろよっ!!」

線路とは程遠い裏路地で、パッショーネの人間が轢死体で見つかった。
ここ数日、全身何かに刺されたり、ぼこぼこに殴られたりとパッショーネの者が様々な死を遂げている。

連日だ。

「一体…誰が」
死体は見慣れたと思っていたが、轢死体というのを見るのは初めてだ。
胃がむかむかして来る。

「おい、ブチャラティ大丈夫か…?」
「餓鬼にはまだ早すぎたんじゃねーか。ベッドでがたがた震えててもいいんだぜ?」
「いや、平気だ。少し血の匂いに咽ただけだ」

そんな会話をしている内にもmこの界隈のパッショーネの関係者が続々と集まってくる。
俺たち下っ端はお偉いさん方の後ろからそれを眺めている。

「これは異状であるとしか…」
「見せしめか、どこの者がこのような…」
「ベンジーナか?チルコか?それとも…」

誰一人、現状を把握できていないようだ。

得体の知れない闇が蠢いているのを感じる。
スーツに身を固めた男たちに付き添われ、一人のチンピラ風の男が現場へ入っていく。

「オッキアリ!!!この服、オッキアリだ!!!!!」
しばらくした後に、悲痛な叫びが聞こえてきた。
やっと身元が割れたか。
もう少し輪の中心に近づいてみる。

「俺…こいつと昨日は2時くらいまで酒のんで…それから、それから別れて…!こんな、こんなことになんで…」
「ふむ。聞いてのとおりじゃ、しばらくは夜道には気をつけるんじゃぞ」

本部の人間たちはそんな生徒指導の先生のような言葉でその場を締めた。

「気をつけるったってどうしたらいいんだよー」
「一人で行動しないようにすればいいんじゃないか?」
「そんなことは分かってるよ。ブチャラティは真面目っつうかなんつうか。お、今日は非番か?」

同じチームの奴と別れて路地に入る。

「ああ。お前は集金か、気をつけてな」
「いいなー。まぁ集金もそんな遅くまでかからないだろうし気楽にやってくるや。じゃあなー」
「またな」

翌日彼はヒキガエルのように潰れた無残な姿で発見された。