舞われまわれ | ナノ







「指令だ」
リーダーの短い言葉で、リビングの空気が一変した。

「今回のターゲットはこのパーティーの主催者だ。上がりをちょろまかしているらしい」
「スタンド使いの有無は?」
淡々としたリゾットの説明にプロシュートが聞く。
「無いと考えて良い。しかし敵が大規模だ。こちらも人数を揃えていく。だからといって気を抜くなよ。今回のメンバーはプロシュート、ギアッチョ、それとマキナだ。逃走経路の確保はメローネに任せる」
「なんでこいつと?」
ギアッチョが怪訝そうにプロシュートを指差す。プロシュートのほうも不思議そうな顔だ。
何故だろうか、この二人仲悪かったっけ?
「大人数が相手だ。広範囲のスタンド優先だ。お前らはそこらへんうまくやるのだろう?」
「オーケイ、わかった。続けてくれ」
「初回にしてはガードきつくない?」
ひとまず納得したギアッチョの横からメローネが声を上げた。
「その点はメローネ、お前にかかってるからな」
「わぉ、責任重大!」
「メローネ、手前手ぇ抜いたらブチ殺すぞ」
「大丈夫だってー」
メローネとギアッチョの穏やかでない日常会話も慣れ始めた今日この頃、ついに初任務です!



こういうことだったのか。
「色仕掛けって…何?」
「メローネの前で言ったら手取り足取り腰取り教えてくれると思うぞ」
「プロシュート…」
使い古された親父ギャグを…。
「まぁ相手はペドロリ趣味だ。色気なんてそもそも期待していない」
「それもどうなの!う…、頑張りまーす」
仕方が無い、これも任務だ。
「おう、行ってこい」
パーティー会場で慣れないヒールとドレスに気をつけながら主催者に近づく。
「ぅゎ…」
第一印象は狸爺。気持ち悪いなぁ。だがしかし、これは仕事だ。
「本日はお招きいただきありがとうございます」
「おお。こんな可愛らしいお嬢さんが来てくれるとは、感激だねぇ」
「お上手ですね」
さりげなくボディタッチをされる。とてつもない嫌悪感、気味が悪いったらありゃしない。
おいおい、ペドロリ趣味丸出しじゃないですか。何でこの人捕まらないの?
暫くボディタッチに耐えながら他愛もない会話、というよりはセクハラに近い会話を続ける。
もう目の前で殺しちゃっていいかなと太ももに隠した小ぶりのククリナイフに手を伸ばそうかと真剣に考え出した頃
「卿、そろそろ」
ガードマンに耳打ちされターゲットは壇上に上がっていった。