舞われまわれ | ナノ







昼にリビングで昼寝をしてしまったものだから日付が変わる頃になっても眠気はやってこなかった。
ベッドの上で転がるのにも飽きた私は真っ暗なリビングでテレビを絶賛独占中だ。
といってもこの時間の番組の中で私の興味をそそるものは無く、通販番組のナビゲーターのオーバーリアクションを楽しむことにした。

「…ん?」
暫くすると玄関のほうに人の気配を感じた。こんな時間に客とは思いづらい。
まさか、招かれざる客と言う奴では!昼間に見たスパイ映画の内容を思い出しながらひとつの可能性を打ち出す。
そいつはやばい、気配を殺し玄関に通じる扉を凝視する。開く扉を前に息を呑む。
しかしその向こうから出てきたのは見知った人物だった。
「っ、なんだ。起きてたのか」
「私もびっくりしたよ」
扉から表れたのはギアッチョだった。
おかえりなさいーなんて声をかけながら彼の体の異変に気がつく。
「ちょ、ちょっとそれ大丈夫なの?」
彼の体の一部は夥しい血で真っ赤に染まっていた。
「ああ、全部返り血だ」
「それは、凄い。なんか拭くもの持ってくる?」
「いや、このまま洗濯機にぶちこむ」
「それ他の洗濯物が被害受けるからやめて。疲れてるなら私がやるから脱げー」
「…つかこの状態見て言うことそれだけかよ」
「地の匂いには慣れちゃってて。遠慮しなくていいよー。眠気が来なくて暇してたんだ」
「そんならいいけどよー。んじゃ脱衣所に置いとくから頼むわ」
「あ、パンツは自分で洗ってね」
「ったりめーだ!洗わせるか!」
あんたは思春期の娘か。ドラマの中の反抗期の娘をギアッチョと重ねてしまう、大体あってるところがまた可笑しい。
暇つぶしも見つかったし私はお掃除マシーンの威力に感動するナビゲーター二人に別れを告げた。