舞われまわれ | ナノ







割と暇なのね、暗殺チームって。
毎日毎日命の危険を感じながら殺気だって息を殺しながらサバイバルな生活を送ると思っていた私にとっては拍子抜けといえば拍子抜けだ。
安全ならばそれで結構なわけだが。
基本アジトに待機していて依頼が来次第それを実行ということだ。
といっても連絡が取れるなら外出もOKだし、皆自分の家も別にあるらしい。
もっとも光熱費も浮くからと皆ほとんど帰らないそうだ。
私の最初の任務はまだ先になるようで、慣れるのが先だとリーダーに言われた。


そんなわけだから皆さんとの友好関係を気付くべくリビングでゴロゴロしているわけだが、なんだかなぁ。
現在リビングにいるのはプロシュートとソルベとジェラート。といってもソルベとジェラートは完璧に二人の世界だ。
ということでターゲットはプロシュートである。しかし静かに雑誌を読んでいる彼はこちらの視線に気付かない、いや気付いてるのかもしれないがガンスルーだ。
最初にかける言葉が思いつかずプロシュートをじっと見つめることになる。なんて話しかければいいんだ。今更やぁ、とか話しかけるのも変だしなぁ。何より集中してるっぽいし。あれこれと考えるが名案は浮かんでこない。彼の伏せられた瞳を見て思うことはいやはやまつげが長いとか、脳内の隅っこでどうでもいい考えも進行中だ。
そういえば彼はなんとも端正な顔つきである。モデルとか出来るんじゃないだろうか。というかこのスーツとかブランド品じゃないんだろうか、エンゲル係数高そうだ。
靴もピカピカである。前に通っていた学校にいた、ませた女の子が男の甲斐性は靴に表れるのよと語気を強めていっていたことを思い出した。そういえば彼女は元気だろうか。
ポルポさん曰く、学校には行かなくても卒業できるらしい。しかしそれで別に自分の頭も自動的によくなるわけじゃない。ちゃんと勉強しなきゃ。というか一度も通ってないが私の籍はこの地域の中学校にあるのだろうか。何だか変な気分だ。ろくに行けないだろうから顔を出す気は無いが学校という場が恋しいといえば恋しい。かといって中途半端に行くのも、なぁ。きっと浮くだろうし組織の存在を知っている教師陣には腫れ物のように扱われるに違いないだろう。なにより暗殺者と同じ教室で勉強するのは健全なる教育現場としてもいただけないものだろう。道徳の時間が酷く滑稽な物になること間違いなし。やはり独学でがんばろう。教科書は何処にしまったっけなぁ。
「何じろじろ見てやがる」
そうだ、確か戸棚のどっかのダンボールに入ったままだ。