舞われまわれ | ナノ







残されたのは私とお兄さん。

「ふざけてんじゃねーぞ!こんな10歳そこらの餓鬼に何ができるっていうんだ!おい!!!」
お兄さんが二人の消えていった扉に吼える。
ぎしぎし、ぎしぎし。
お兄さんが吼えるたびに拘束椅子は軋む。
それでも丈夫なその拘束具はお兄さんをこの場所に縛り付けている。
いっそこの椅子が壊れたら。
いっそ逃げてくれたら。

やめた。
考えてもどうしようもない。

「ごめんなさい」
これからが私の仕事だ。
まずは、いつものように痛いことをするんだっけ。

「ブレインシチュー…」
私の呼びかけに応じて綺麗で不恰好なお人形が姿を現す。
彼女とはいつから一緒にいるんだっけ。
お母さんが私の事殴り始めた頃だっけ。
何でこの子シチューなんて名前なんだろう。
お腹すいた。
早く終わらせよう。
シチュー、温かいシチューを最後に食べたのはいつだっけ。

そうだ。

「熱い鍋に突き落としてしまおう」
ブレインシチューがお兄さんの頭に長い爪を差し込む。

「は?お前何を…っ!?!?」
途端にぶくぶくとお兄さんの肌が爛れ始める。
「あっ熱いいいい…!?てめ、なにしや…っがあああああああああああああああああああ」

絶叫、悶絶。
不自由な手と足を精一杯に動かしながらお兄さんが転げまわる。
後は何をしよう。
いきなり
大技をしすぎただろうか。
部屋の外でこの状況を録っているであろう彼らの反応しか私は考えていなかった。