舞われまわれ | ナノ







太陽が頂点に達す頃、俺は一抹の不安を覚え始めた。
商店の奥さんの情報はあやふやなものだ。マキナを見たという証言が無い以上外れかもしれない。
一度町に戻ってまた聞き込もうか。
もしかしたら財布を落としたことで怒られるのが怖くて家出をしただけで家に帰ってきているかもしれない。しかもその途中で友達と会いそちらの家に厄介になっているということも…。
そこまで考えて自嘲する。そんなわけが無い。
出口の見えない探索で精神的に疲れているのだろうか、現実逃避を始めるなんて。
しかし、あてが無いのも事実だ。一旦町で他に目ぼしい情報が無いか聞いてみよう。

「ブゥ〜、コンテナ街ねぇ」
「はい、そこに近頃怪しいものが出没してると」
「しかしコンテナ街なら我々も定期的に巡回しているが、担当の者に聞いてみようか」

俺はポルポの事務所に来ていた。マキナのことは伏せ、あくまで事件の情報として伝える。これでコンテナ街に捜索が入るかもしれない。
ジリリリリリリリリリリリリ…
その時、事務所備え付けの黒電話がけたたましく鳴り響いた。

「フゥ、すまないね」
「いえ、どうぞ」
「私だ。…………そうか、わかった」
電話の内容はそれだけだった。
「すまないねぇ。いや全くすまない」
「いえ、ポルポさんもお忙しいでしょうから」
「電話のことじゃない」
「え?」
「コンテナ街を仕切っていた奴が死んだよ。死因は、言わないでも分かるかね」
―焼死、か。
「そいつは死の一服前にこういっていたらしい。ブフゥ〜、変な奴とコンテナ街ですれ違ったとねぇ。そいつは10歳そこらの少女を引きずってたそうだ。その連絡を他の者に携帯で伝えながらタバコを吸おうとしたら、ということだ」
「コンテナ街を、調べてきます」
挨拶もそこそこに俺はまたコンテナ街へと向かった。

「ブフゥ〜…少女ねぇ」
その言葉に異様に反応して見えたが、一体何が起きているのやら。