舞われまわれ | ナノ







「ブローノ、マキナは…」
「…すまない。また今日も探してみる」
明け方ごろ家に戻ると、父さんは玄関にいた。
寝ないで待っていたのか。そんなにして待ってくれた父にマキナの姿を見せることが出来ず申し訳なく思う。
朝食を手早く作る途中、マキナが作り途中であったであろう料理が目に留まる。
「これは…」
下ごしらえされたポルチーニ茸を見て気付く。オーブン焼きを作るつもりだったようだ。
俺の好物の、ポルチーニ茸のオーブン焼きを。

彼女を見つけなくては―
「行ってくる。父さん、昼飯は冷蔵庫の中にある」
父さんに声をかけ家を出る。
といっても何処を探そう。ポルポからの命令と関係ない以上パッショーネの力は借りられない。
「ブチャラティ!ああよかった!」
俺は昨日の商店の前を足早に過ぎようとしていた。
「奥さん、なにか…わかりましたか?」
半ば期待せずに問う。
「それがね、関係あるか分からないけれど…数日前から怪しい奴が海辺のコンテナ街をうろついてるそうよ、人を担いでいるところとかも目撃されているみたいで。あくまで噂なんだけどね。それでももしかしたらマキナちゃん。捕まって…」
「コンテナ街、わかりました!」
走り出した瞬間、角から出てきた少年とぶつかってしまった。
「わぁっ!」
「すまない!」
お詫びもそこそこで行くことを許してほしい。
心の中で言ってコンテナ街へ急ぐ。


「び、びっくりしたぁあ」
あれ、今のって昨日ポルポが言ってた先に調査を始めてる部下の…
「ブローノ・ブチャラティ…」
血相を変えて何処へ走ってるのだろうか。
まさか、今回のことで何か掴んだ?
僕は慌てて彼の後を追うことにした。