舞われまわれ | ナノ







「もうお前となんか口きかねえからな!!」
「望むところだ、このド低脳!!」
フン、とどちらが先と無く顔をそらしあうナランチャとフーゴ。
「長期戦か」
「めんどくさいわね」
夜、良い気分で家に帰ってくるとフーゴとナランチャが大喧嘩をしていた。

「あまり遅くなるようなら迎えを呼ぶんだぞ、まぁ今日は無理だっただろうが…」
この様子じゃあな、とブチャラティは苦笑した。
そういう彼も今しがた帰ってきたばかりのようだった。
年頃の女子の夜の一人歩きについて軽くお小言を貰ったが、目の前の大騒ぎのおかげで話題はすぐにそちらに逸れた。

「何が原因なの?」
「それが俺にも分からなくてな。帰ってきた時点で取っ組み合いの喧嘩をしていた」
いつものようにすぐ終わるだろうと勝手にさせていたら、止めるタイミングを逸したようだ。
確かに酷い暴力にまで発展するなら怒鳴れるが、今回はどうやら勝手が違うらしい。
直情的に一気に燃え上がってすぐに沈静化するのが普段の喧嘩だ。
しかし今回は怒鳴りあうことは無いが、お互い一歩も譲らないようだ。
あからさまに相手の存在を無視しあっている。

「…マキナ、こんな状況ですまないが、明日も一日外に出る。取り持ってやってくれ」
「うん、頑張る」

さて、もう夜も遅い。
とりあえず二人には家に帰ってもらおうか。
一日置けば、少しは頭も冷えるだろう。
こういうとき、2人がそれぞれ部屋を借りてくれていたことはありがたい。

このまま家の中で静かな攻防戦を繰り広げられたら、私が外泊するところだ。