舞われまわれ | ナノ







「ってめぇ、だから急に人を引っ張ってきた理由を言えってんだメローネ!!!」
「だぁかぁらぁ!着けば分かるってばっ!ほら入って入って!!」
がやがやと玄関のほうが騒がしい。
「っんだよ、折角非番だったのによォ、…マジか」
「久しぶりー!マキナー!!」

扉を開いたところで停止したギアッチョを押しのけてメローネが飛び込んできた。

「久しぶり、メローネ。ギアッチョも久しぶり」
「お、おう」
腰に張り付いてきたメローネの話を聞くと、私がいることを知って車を飛ばして来てくれたらしい。
非番で家でゴロゴロしていたギアッチョを運転手として問答無用で連れ出して。

メローネを引き剥がしてギアッチョを労う。
「ギアッチョお疲れ様…」
「いいじゃん!マキナに会えなかったら会えなかったで絶対に機嫌悪くなるんだからさ、俺に感謝してもいいんだぜ?」
ギロッとギアッチョがメローネを睨むと何処となく部屋の温度が下がった気がする。
巻き添えは食らいたくないので、話を変えてみる。

「そういえば、あとジェラートとソルベが揃えば皆揃うのにねぇ」
「あぁ、あいつらなんか最近立て込んでるらしくてな。アジトにも全然顔出さないんだ」
イルーゾォがため息をつきながら言う。
「最近全然見てないな、後処理はしてくれてるんだけどよォー」

ギアッチョがそれに続く。

「そっか、忙しいのか…」
「なんか別に仕事始めたんじゃないか?収入安定しないしよ、俺たちって」
ホルマジオの言葉にちくりと胸が痛んだ。

「そっちが軌道に乗り出したとかならさ、集りに行こうぜ!」
メローネは楽しそうに会話に食いついた。

「集るなよ。でもまぁそのうち嫌でもまた顔を見ることになるだろ。にしてもあいつ等、運が無いな!こいつに会えないなんてよ」
そう言ってプロシュートは私の首に腕を回して頭を撫でる。
その拍子に一言、私の耳元に零した。

「な?気にする必要なんてなかったろ?」
「うん、皆に失礼だったね。ありがとうプロシュート」
「どういたしましてってんだ。でもまぁ会えない奴らが愚痴るだろうから取れんならアポ取れよ」
そういってプロシュートはこそこそと紙切れを差し出してきた。
雑誌の切れ端のそこに書かれているのは数字の羅列、どうやら携帯電話の番号のようだ。
「うん、ありがとう」

「なに内緒話してんの?」
メローネが不機嫌そうに間に割って入ってきた。
きっと職業柄、電話番号を教えるのは良いことではないのだろう。
私はさりげなく袖口に紙をしまった。
「別に。ソルベたちに会えなかったのだけが心残りだわ。皆がアジトにいないなんて」
「冗談言うなよマキナ!アンタがいないのにこんな野郎ばっかのところに来るわけ無いじゃないか!」
メローネは素っ頓狂な声を上げた。

「えっ」

その言葉を理解するのにしっかりと5秒ほどの時間を費やす。

「そうだったの…?」
他のメンバーに振ってみると、皆あからさまに顔を背けた。
それはどっちの意味ですか!?
すぐに突込みが来ない辺り、これは自惚れても良いパターンなのでしょうか。

そこまで考えて、顔に血が昇ってくるのを感じた。
「え、…えええええええ!?」