舞われまわれ | ナノ







「本当にいた」
「お久ー」
ホルマジオと一緒にイルーゾォが『こちら』のリビングに入ってきた。
「こんなにリビングに人がいるの久しぶりに見たかも」
本当に久しぶりなようで、イルーゾォはしげしげとリビングを眺めている。
「お前はそもそも『こっち』に来ねえじゃねえか」
その横でホルマジオが苦笑した。

「扉の前で立ち止まるな、通れないだろう」
その背後に大きな影。
リゾットまでリビングにやってきたようだ。
「ああ、悪い悪い」
仕事がひと段落ついたのだろうか、彼の手には見慣れたコーヒーカップ。
「リーダー、コーヒー淹れようか?」
「…ああ、頼む」
ひとつ間をおいて、リーダーはとても嬉しそうに笑った。
といっても口角が普段よりも上がるくらいなのだが、珍しい。

PiPiPiPi…

カップを受け取ろうと手を伸ばすと、初期設定の携帯電話の着信音が流れた。
どうやらリーダーのポケットからのようだ。
ディスプレイに表示された番号を見てリーダーは尚鳴るそれを私に差し出した。
「え?」
電話帳登録をされているわけではないその番号を見ても私には相手が皆目見当がつかない。
「メローネだ」
「ああ。出ないの?」
「出て驚かせてやれ」

…リーダーって結構人をおちょくるの好きだよな。
しみじみと思いながら、それを受け取る。
私も加担している辺り人のことを言えた義理ではないのだが。
通話ボタンを押して耳に当てる。

「Pront?言われてた仕事二件とも片付いたぜリーダー。…もしもぉーし、聞いてる?」
「聞いてるよー」
「そりゃあよか…マキナ…?」
「ビンゴ!久しぶりだね、メローネ」
「…え、ちょっとどういうこと!?なんで!?」
けたたましい声に電話を少し耳から遠ざける。
「アジトに遊びに来たんだよ。声聞けてよかった、リーダーに代わるね」
そうしてリーダーに携帯電話を手渡す。
「メロー…、切れたな」
「え、あれ?なんでだろう。あ、二件ともお仕事終わったってさ」
「そうか」
それじゃあ私はコーヒーを淹れてくるとしよう。

30分後、玄関のほうがなにやら騒がしくなった。