舞われまわれ | ナノ
扉の前で深呼吸。 しっかり三回ノックをして部屋の中へ声をかける。 「リーダー、遊びに来たよー」 「久しいな、入っていいぞ」
予想と反していつもの調子の声が帰ってきた。 驚くリーダーという珍しいものが見れると期待していたのだが。 リビングのペッシの声が聞こえていたのだろうか。 扉を開けると、もはや定位置ともいえるパソコンの前にリーダーは座っていた。
「相変わらずのようで」 「そういうお前は変わったな」 「え、そうかな」 「本格的な後輩でも出来たのだろう、少し大人びたな」 「凄い、よくわかったね」 そんなに大人びただろうか。 だとしたら嬉しい変化だ。 考えても見れば今まで年上に囲まれて生きてきた。 なんだかんだずっと周りがあれこれと甘やかしてくれてきたから、年下という存在ができたのは大きいのかもしれない。 無意識のうちに染み付いてしまった甘えが消えたのだとしたら、それは大変喜ばしいことだ。 誇らしげに胸を張って見せれば、気のせいだったようだなんて笑われた。
「おい、リーダー。連絡した報告書、だ…ぜ…」 ノックもなしに勢い良く開いた扉の先、言葉の途中で私と目が合い固まったその人は、 「ホルマジオだー!」 「な、マキナ!?…だからプロシュートの奴笑ってやがったのか…」 「え?」 「リビングで言われたんだよ、面白いもんが見れるぜってな」 私は客寄せパンダか何かか。 「久しぶりだな、背ェ伸びたか?」 「そうかな?自分じゃ分からないや」 話し込んでいるとリーダーがわざとらしく咳払いをした。 「ああ、そうだった悪い悪い。これが件の報告書だ」 「パソコンはいつ直るんだ?」 「それが暑さでイカレちまったみたいでよぉ。秋になったら買い換えることにするわ」 「わかった、暫くは携帯に連絡を入れることにする」 「頼むわ。マキナ、まだいるのか?」 「え、そのつもりだけど不味いなら」 「そうじゃねぇよ。もう少ししたらイルーゾォも来るからよ」 「ほんと?じゃあリビングで待ってようかな」 「おう、ゆっくりしてけ」
ホルマジオはリーダーに口頭でも任務の報告をするというので私は下がらせてもらった。
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