舞われまわれ | ナノ







「もう思い出すのも勘弁だよ…」
最後の目撃者の話はそれで終わった。

今までの話をまとめると、6人の被害者のうち4人が喫煙者でタバコを吸おうとライターで火をつけた瞬間体に炎が走ったという。
残りの二人もコンロなど火元は別にあり、それが一気に体に回ったとのことだった。

自然発火ではなかったようだ。
そして周りに怪しい人物はいなかった。
既に恐らくだが、気付かないうちにスタンドで何かされていたのだろう。
一瞬で体に火の手が上がる、体のほうに何か仕掛けられたと思うのが普通だな。

「ただいま」
マンションに帰ると当たり前のようにする筈の声がしなかった。
もう寝たのだろうか。

「ああ、ブローノ!マキナを知らないか!?」
「…家にいないのか!?」
奥から出てきた父さんの声に耳を疑う。
普段寡黙な父がここまで慌てている、それだけで俺は十分に事態の深刻さを思い知らされる。
俺が家を出てから二時間経っている。
俺が出た後、すぐに卵を買いに行っただって?
なんてことだ…。
「ブローノ…」
「ああ。行ってくる!戸締りをしっかりしといてくれ」
ある最悪の仮説を打ち消すために、俺は深夜の町へと飛び出した。