舞われまわれ | ナノ







はむっ。

首の後ろからする酒気を帯びた息が臭い。
背中にへばり付いてくる通常よりも高い体温は大変暑苦しい。
「どういうことよ…」

何故私の耳たぶにナランチャが噛り付いているのだ。

「誰だ、こいつに酒を飲ませたのは」
「ナランチャが自分で頼んだんですよ、僕の真似をして普段飲まないのに頼むから…」
「ということは元凶はフーゴということで良いんですね、覚えとけよ」
これでは事務処理もままならない。
といっても後は書類を分類するだけなのだが。
「明らかに元凶はそいつ自身でしょうが」
後ろのテーブルで食事をとっていたフーゴはやれやれといった調子で言う。

「ナランチャ、くすぐったい、離れて。それは食べ物じゃあない」
「ほんがんぐんご」
「ひゃっ、口に入れたまま喋らないでってば…」

とんでもなくくすぐったかった。
思わず変な声が出てしまったじゃないか。

「しかも重いし…」

だが逃げようにも後ろからがっちり捕まってしまっているため、一人ではどうしようもない。
無理やり体を捻ってフーゴを睨みつければ見かねたのかナランチャを引き剥がしにかかってくれた。
「ナランチャ、もう上に戻りましょう?」
「なんらよぉ!」

完璧に管を巻いている。
私はそれを無視して紙ナプキンを此方に引き寄せ耳元をぬぐった。
微妙に歯型がついた気がする。

「うわっ、おい、何すんだ!!」
「…見境無いわねぇ」
ナランチャは今度はフーゴの顎に噛み付いていた。
顎って、また噛みづらそうな所を。

「ガムでも与えればいいのかしら」
勿論犬用のあの骨型のものだ。
「知りませんよ!ほら、しっかり歩け!!」
ナランチャの運搬はフーゴに任せて私は伸びをひとつした。
酔っ払いに邪魔されながらも事務処理はどうにかひと段落着いたわけで。

私もそろそろ上に引き上げようか。

「しっかり歩けって言ってんだろッ!」
「なんらよそのくいのきぃきかたああ〜ッ」
…暫くしてからにしよう。