舞われまわれ | ナノ







「もう少し早く生まれてりゃあなぁ…」
「どうしたの急に」
リストランテでぐだぐだと昼ご飯のデザートだか三時のおやつだかわからなくなってきているドルチェを摘んでいるとナランチャが突拍子も無い声をあげた。
「いやさ、もっと早く生まれてりゃあもっともぉ〜ッとブチャラティの役に立てたかなって」
「今だって十分やってくれてると思うけど」

ぽんぽん、とナランチャの頭をなでた。

「それにほら、マキナだってすぐにそうやって子ども扱いするじゃん!ひとつしか違わないって言うのによォーっ」
この扱いはナランチャがナランチャである限り、例え年上であろうとも変わらない気がするのだけれども。

「フーゴはそうは思わないのか?」
私が同意しないのを見てナランチャはフーゴに話を振った。
「僕ですか?うーん、確かにもう少し早く生まれていればナランチャに年上面されなかった、と思うと早く生まれたかったですね」
「どういう意味だこのヤロー!」
心から心外そうにナランチャは声を上げた。
「そのまんまの意味でしょ…」
他の意味があるのなら教えて欲しいくらいだ。
フーゴはそんなナランチャに目もくれず、少し考えるように黙ってからまた口を開いた。

「でもまぁ、今のこの位置も気に入ってますよ。皆よくしてくれるし」
「別に、俺だって不満があるわけじゃないぜ。居心地いいしな」
「確かに。手のかかる弟たちも悪くないと私は思うけど」
「弟かよ…。でもまぁ身長で考えたらマキナが一番年下だけどな!」
「それってしょうがなくない!?男じゃないもん、そんなに伸びないわよ」
「手のかかるって部分の方が僕は引っかかりますけど」
「確かに!手がかかってるのはマキナのほうだよな!」
「ちょっと!どういう意味よそれ!」
心外だ!
「そのまんまの意味だよ!」
してやられたというわけかッ!!

「まぁまぁ。あ、新しく紅茶頼みます?」
「…そうだね、お願いしようか」
クールダウン、クールダウン。
ここは年上として大人の余裕を前面に出して、
「お前たち、今日は早いな」
リストランテのドアが開くと、ブチャラティが入ってきた。
「お兄ちゃんの登場だー」
「兄貴かぁ、なんかいいなそれ!」
「何の話だ?」
「いえこちらの、気にしないでください」
事態が飲み込めず首をかしげるブチャラティはそれでも楽しそうに見えた。