舞われまわれ | ナノ







「おい、こっちだ!」
「どうも」
広場の近くの裏道に停められた車の窓が開く。
スクアーロ、とかいう人がこっちを見て叫んだ。
車に乗り込んで手渡された目隠しを自ら結ぶ。
手馴れてしまったもんだと自分に感心した。

「どんだけ人材不足なのよ、パッショーネ…」
そう呟けばティッツァーノの声が反応した。
「これでもいるにはいるんですが、情報を聞き出すというピンポイントの話になると難しいんですよ」
「おい、やめろよ。あいつらの話は…」
スクアーロが心底嫌そうな声を上げた。
そもそも続くと思っていなかった会話だったので、遠慮なく切らせてもらった。
「ですが、そうですね。彼らも呼べばよかった」
「はぁ?化け物ばっか集めて何する気だよ…」
…その化け物に私も換算されているような気が。
なんとも聞き捨てならない話だ。
「いえね、惨殺と拷問の違いというものを彼女から学んで欲しいといいますか」
拷問の目的を果たさない拷問。
チルコにいた頃を思い出し、少し頭が痛くなる。
「…なんか私とんでもないものと今一緒くたにされた気がするんだけど」
お願いだからああいう人種と私を一緒にしないで欲しい。
そう、私はあれらとは違う。
「似たようなものですよ」
「…やっぱ私あんた達嫌いだ」
「そうですか、到着までもう暫くかかるので黙っててもらって結構ですよ」
悪びれもせず、彼は続けた。
私は、違う。
違うのだ。



「ただいま」
早くシャワーを浴びたい。
体に染み付いた臭いは大変不快なものだ。
「マキナ、遅かったな」
「おいマキナー!遊びに行くなら誘えよー!」
「おかえりなさい」
次々と返ってくる声に、やっと自分は戻ってきたのだと実感し安堵する。
しかし、うまく私はここを切り抜けシャワーにたどり着かねばならない。

どうか、ばれませんように。