舞われまわれ | ナノ







既にハンマーが上がっている拳銃は、引き金を引くだけで発射されるだろう。
それでも、私は動けなかった。

「あばよ」
「エアロスミスッ!!!!!」
「っぐぁっ、…あああああああああ」
右方からの絶え間ない銃撃に合い、男はあっけなく床に臥した。
彼の断末魔の叫びをかき消すかのように、銃撃は容赦なく続いた。
「…あ…なん…」
それでもこの耳は彼の最期の声を拾ってしまった。
断末魔は、変わらず彼の声だった。

「マキナ!!大丈夫か!?」
「…ナランチャ…」
「おかしいと思ったんだよ、下で戦ってたらマキナの様子を見てくるってブチャラティの声がしたんだよ。そんで俺はそのまま戦ってたんだけどよ、上にあがってく反応が二つあったんだ。俺はてっきりフーゴも一緒に行ったんだと思ってたらよぉ、フーゴは下にいたんだよ!!!そんでフーゴになんでブチャラティと一緒に上に行ってねえんだよ!って聞いたらな、びっくりしたんだけどよお!!!ブチャラティがフーゴの隣にいるんだよ!!『なんのことだ?』なんて聞いてきて!!!!って、おい、マキナ!!!お前傷だらけじゃん!!!!」

エアロスミスの機関銃みたいに、ナランチャはよく喋る。
私は話の展開についていくのがやっとだ。

「…え、ああ。肩なら平気」「肩だけじゃねーよ、そいつにやられたのか?腕ぼろぼろじゃん」
「…ああ。そうだね」
「…どうしたんだ?」
「ううん。二人も無事なのよね?」
ナランチャは確かに頷いた。
それを確認して己にかけたブレインシチューの能力を解除した。
途端に襲ってくる眩暈と吐き気に耐え切れず、私は意識を手放した。

考えずにはいられなかった。
あの声が現実となる日を。