舞われまわれ | ナノ







「ただいまー!あれ、ブチャラティ。今日は集金?」
家に帰ると入れ違いに玄関でブチャラティが慌しく出かける支度をしていた。

「いや、ポルポさんから呼ばれている。…マキナ、今日はもう家を出るなよ?いいな」
「え、うん。わかった。いってらっしゃい」
「ああ、いってくる」

ブチャラティを見送り、お父さんにもただいまをする。
彼に助けられて早一年が過ぎた。
本当に感謝しても仕切れないことの連続である。

独学、というかブチャラティやお父さんのおかげで中学校に通うのに苦にならないだけの学力も身につき今私は学校にも行けている。
ブチャラティの人柄の良さは近所でも有名なのか町の人も皆よくしてくれる。
本当に幸せ者だと思う。

私は鼻歌を歌いながら料理をするべく台所へ向かった。
レシピ本をペラペラめくりながら今日は何を作ろうかと考える時間は楽しい。
そしてそれを食べて喜んでくれる二人の顔を見るのが、嬉しい。
今はまだ見た目が悪くなってしまうのだが、いつかこの本のように何処に出しても恥ずかしくない料理が作れるようになったらなと思う。
よし、今日はこれを作ってみよう!これなら二人とも喜んでくれること間違いない!少し難しそうだけれど、それでもこれは、
「あれ、卵が無い…」
冷蔵庫を開けてしばし固まる。

どうしたものか。
ブチャラティに外に出るなといわれたけれど、すぐそこの商店に行くくらいなら大丈夫だろう。
お父さんに買い物に行くと告げて私は外に出た。