舞われまわれ | ナノ







<ウルトラ上手に出来ました>

「できたー!」
出来ました。
なんとかなりました。
私はやればできる子なんです。
というわけで渡しにいかなくてはなりません。

こういうのはやっぱり、お世話になってる人からだよね。
私はコーヒーカップを取り出した。





コンコンコン
「リーダー?」
返事が無い。
・・・まぁ、いっか。
本当に入られたくないときはたいてい鍵がかかっているものだ。
ドアノブに手をかけると、抵抗も無くドアは開いた。
「というわけで、お邪魔しまーす」
リーダーはパソコンの前にはいなかった。
意外だ。
てっきり音楽でも聞きながら作業をしているのかと。
とりあえずパソコンのデスクに持ってきたトレイを置いた。

「リーダー…?」
声をかけても返事がないので奥の部屋をのぞくと、
「寝てる…」
私が入ってきても寝続けているということは、相当疲れているのだろう。

徹夜明けとか言ってたもんなぁ。
どうしたものか。

朝の哀愁漂うリーダーの言葉通り、甘いチョコと一緒にコーヒーを淹れて来たのだが、チョコだけ置いて帰るか。
それがいい、私は手前の部屋に戻り、チョコをデスクにおいてトレイとカップを持ち上げた。
そして極力音を立てないように気配を消した上で、ゆっくり部屋から出ようとした。
「…何か、用か?」
「あれ、起きちゃった」
奥の部屋から声がかかった。
起こしてしまったとしたら申し訳ないことをした。

「気配を消そうとしている気配を感じたのでな」
「・・・なるほど、おはよう」
流石である。
暗殺者の鑑だ!

「すまないな、仮眠を取っていた」
「ううん、仕事お疲れ様。チョコできたよ」
「…そうか、コーヒーも入れてくれたのか」
「あんな顔でお願いされればねえ?」
「たまには調子に乗ってみるものだな」
「え、冗談だったの?」
「いや、甘えてみるのも中々いいものだ」
「頼られるのは別にいいけど」
「甘えさせてはくれないのか?」

そう言って芝居かかった風に髪の毛を一房掬われ、口付けを落とされた。
このリーダー、完璧に私『で』遊ぶ気満々だ。

「からかわないでよ!コーヒー冷めちゃうからお早めにどうぞ」
寝起きのリーダーはこういうことがあるから油断ならない。
そう言ってむくれれば、悪い悪いと頭を撫でられた。

「そう拗ねるな。早速報告書のお供に頂くとしよう。ありがとうな、マキナ」
「どういたしまして」
仕事の邪魔になるのはまずい。
私はリーダーの部屋を後にした。