舞われまわれ | ナノ







<ペッシの場合>

「マキナ、おはよう」
「おはようペッシ」
「今日はバレンタインデーだね」

直球、だと…?
なんだ、兄貴分より男気があるじゃあないかペッシ。

「…そ、そうだね」

同意してしまった…。
まさかペッシがこうも直球だったとは、想定外だ。

「まぁ俺は贈る相手いないから、関係ないんだけどよ」
「え?」
「え?って。俺にそんな相手いるように見えるか?」
「――ハッ!!」

そうだった!
私は大事なことを忘れていたッ!!!!

そう、ここはイタリア!

ジャポーネのチョコレート会社が考えた販売戦略にどうしてあわせる必要がある!

「ペッシ、ありがとう!」
「どういたしまして?」

そうだったのだ、そもそも私は頑張る必要が無いのだ!
義理チョコなんて文化も、ここには無いのだ!
だってバレンタインは、恋人たちが愛を確かめあう日・・・つまり恋人のいない私には無関係の日であるわけだ。

私はどっしりと構えていればいいのである。

ビバ、サンバレンティーノ!!!

「助かったよ!」
「そ、そうなのか?」
肩の荷が下りた喜びと感謝を表すべく、ペッシの両手を握りしめた。