舞われまわれ | ナノ
「猫…よね」 「ええ、猫です。」 「ふわふわした奴だなー」 「今日と明日、預かることになった」 なんで? ブチャラティの言葉に、三人で首をかしげた。
隣の地区の幹部が死んだ。 他所の組織にはめられて殺されたらしい。 その幹部はパッショーネの武器の密輸の元締めだったらしいので、それに関して小競り合いが発生したのだそうだ。 対抗組織の襲撃により、幹部を含め側近も全滅。 その後行われた家捜しで対抗組織が見つけられなかったものが二つ。 顧客データと肝心のブツの保管場所。
「そいつらは今もそれを"ちなまこ”になって探しているんだろ」 「ナランチャ、血眼です」 その話はこちらにも伝わってきている。 武器密輸の管轄内のチームは今大変らしい。 「ですが、それとこの猫…何の関係が?」 「この猫はな、その死んだ幹部の愛猫だ。そして、敵が求める情報は全てこの中にある…らしい」 全員の視線が経緯を説明するブチャラティから猫へと移る。 いかにも偉い人に飼われていそうな気品に満ちた猫、ペルシャ猫といっただろうか。 真っ白でふわふわの毛並みに凛とした顔立ち、美人猫である。 その気品さとともに目を引くのが左右で眼の色の違うオッドアイ。 右が金で左が銀、なんともリッチな猫だ。 蝶よ華よと育てられてきたことが眼に浮かぶ。 しかし、一体この猫の何処にそんな重要な情報が眠っているというのだろうか。
「この猫に?腹ん中に紙が詰まってるとでも言うのかよ?」 信じられねえ、とナランチャが猫へ手を伸ばすが猫はすばやくその手をはたいた。 「ってぇ!」 「猫は子供が嫌いって言うよね」 「おい、マキナ!そりゃどういう意味だ!」 「騒ぐな二人とも。俺たちは情報部が猫の解析の準備が出来る明日まで預かる。それがポルポさんから依頼された任務だ」 4人分の視線を受けた猫は、居心地が悪そうに低い声で鳴いた。
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