舞われまわれ | ナノ







「何でドイツの首都がモスクワなんだ、ド低脳ーッ!!!!」
「いってぇな!!!何しやがんだ、こんの糞野郎!!」
「ここは託児所か」
「マキナ、お前人のことを言えるのか」
「・・・」
ブチャラティを睨んでも軽く笑って流されてしまった。
ずいぶんと楽しそうだな。
どうせ私は精神年齢が低いですよ。
でも、さすがにあそこには混じらない。
フーゴとナランチャは今日も元気に仲良く喧嘩している。

「しかし、特にこれといった事件もないし平和よね」
「強いて言えば今眼の前で流血沙汰が起きているがな」
「…それはそれよ、ブチャラティ」
それにあの喧嘩は後数分で収まるだろう。

「事件が起きろとは言わないけれど、何もなさ過ぎるのも逆に不安だわ」
ギャングがこんな平穏な毎日を過ごしていていいのだろうか。
暗殺チームの皆を思い出して、後ろめたくなる。
あれくらい、働かなくちゃ。
シマがあると何もしなくても定期的にアガリが入ってくる。
命を懸けて殺しをする割には一つ一つの報酬が高くない暗殺チームとは大違いだ。
働かざる者食うべからずなんて言葉が滑稽に思えてくる。

「ブチャラティ、本当に何にも仕事ないの?」
「あれば伝えている」
「そっかー…」
既に落ちた肩をさらに落としてみせるとブチャラティはため息を一つ吐いた。

「…そうだな、本当は二人に任せようと思っていたんだが…まだかかりそうだしお前に頼もう。この書類をポルポさんに渡して欲しい」
確かに、2人はまだ取っ組み合いの喧嘩をしている。
長引いているほうではないだろうか。
「了解!」
二人に仕事を奪われないうちにと、私はすぐさま店を出た。
それにしても、もうちょっと仕事らしい仕事はなかったのかしら。
これじゃあ、まるでお使いである。

いや、まるでじゃなくまんまお使いなのだけれども。