舞われまわれ | ナノ







きゃーだのわぁーだの一人、楽しそうな悲鳴を上げながらマキナは居間に戻ってきた。
「可愛い!ひらひら!」

プリーツスカートの裾を気取って摘みながら彼女はくるくると回る。

「サイズは問題ないか?」
「うん!お父さんに見せてくる!」
どたどたと勢いのある足音を響かせながら彼女は父の私室へと駆けて行った。

「廊下は走らない!」
「はーい!」

足音よりも大きな声で返事をして、彼女の足音は止んだ。


彼女が来てからこの家も騒がしく…いや、賑やかになったものだ。
そういえば、父との会話も増えた気がする。

父のことを口下手と思っていたが、俺も人のことを言えなかったのかもしれない。

「…さてと」
家で食事を作れるのは俺だけだ。
俺が動かなければ我が家は飢え死に、そろそろ動き出さなければ。
最近はマキナも一緒に作っているが危なっかしい場面が多々とあるので一人ではとても任せられない。
そのほかの洗濯などは率先してやってくれていたが学校が始まるとそれもかなわなくなるだろうか。
最初は俺の仕事が増えるだけだったが今ではとても助かっていた。しかし、学校に行くのだから彼女も忙しくなるだろう。
こればかりは仕方がない。

学生のうちだからこそ、学べることは多い。
家事にかまけてそれをないがしろにしては欲しくない。
そうだ、今日は入学祝に彼女の好物をたくさん作ってやろう。

冷蔵庫の中身を思い出しながら俺は今日の献立を練り始めた。