舞われまわれ | ナノ







「こいつにスパゲッティを食わせてやりたいんですが、かまいませんね!!」
そういってフーゴは、風の冷たいある日一人の少年を拾ってきた。


「先ほどの少年だが、やはり入院の必要があるそうだ」
「そう。でも命に別状はないんでしょう?良かったわね、フーゴ」
「ええ」
医者の下へ彼を連れて行ったブチャラティが帰ってきた。
医者といっても正規の者ではない。
腕は利くがモグリだ。
だからこそ、表沙汰には出来ない怪我を見てくれるのだが。
「まああそこなら安心ね」
「ああ」
私もブチャラティも彼には信頼を置いている。

「暫く彼の容態が安定するまでは顔を見せるつもりでいる。」
「それ、私も行ってもいいの?」
「…あんまり彼を疲れさせるなよ?」
「え、どういう意味?」
そう食いつけばブチャラティは愉快そうに笑った。



「というわけで。こんにちは、容態はどうかな」
チーム内で決めたことはただひとつ、『詮索しない』ということ。
彼から話さない限り名前も年齢も何も聞くことはしない。
それがひとつの線引きである。
あくまで彼は堅気でありこちら側の人間ではないのだ。
「…別に」
「それはよかった」
言いながらベッドの脇の椅子へと腰を掛ける。
そんなお約束があるので迂闊な事を口に出来ない。
でもこれはとても重要なことなのだから仕方がない。
しかしそうなると何を話せばいいのやら。
少年は黙って下を向いている。
私は窓の外へ話題の種を求めてみた。

「・・・」

特に何もなかった。