舞われまわれ | ナノ







「ッ顔は、顔はやめようよ!」
「黙れ!ミトコンドリア!!」
「それ知ってる、なんか単細胞な感じ、ってそういう意味!?」
「ミトコンドリアは真核生物だ、屑頭ッ!!!!!!」
また(私から見れば)些細なことでフーゴがきれた。
明らかに顔を狙って放たれる鉛筆を二、三度避けていく。

顔は、本当に顔はやめないか!
これでも、腐っても女である。
そんな私の主張は受け入れられなかったものの、暫く避けるうちに彼の怒りは収まったようだ。

「すみません、マキナ。ついカッとなって」
「いや、良い運動でした」
どちらかといえば実戦でしたが。

「フーゴを見てると如何に私たちが普段躊躇いながら戦っているかがわかるよ」
「・・・すみません」

彼は謝るときは全力で謝るから大変弄りにくい。
「おい、昨日頼んだ書類できたか?」
そのとき、リストランテの個室のドアが開きブチャラティが入ってきた。
「ブチャラティ!おかえりー!!」
「おかえりなさい」
封筒を取り出すフーゴを横目にブチャラティに声をかける。
ポルポさんに会った後の彼はいつもどこかぎこちなくなる。
「ポルポさん、元気だった?」
「ああ。相変わらずな」
そこではじめて彼の肩から力が抜けた。
上司と言えどもいろいろと思うところがあるようで。
しかもそんな相手に信頼されているわけだから、ことは第三者から見ても複雑である。
こうして定期的に直接報告に上がるくらい。
そう、彼は刑務所へ定期報告に行ってきたのだ。

「ブチャラティ、これです」
フーゴが渡した封筒から早速書類を取り出しチェックしていくブチャラティ。
「了解した。マキナ、これを封して情報屋のところへ」
「うん、行ってきます」
ギブアンドテイクの関係の情報屋への報酬はまた情報である。
私はしっかりと封筒を握りしめ、外へと繰り出す。

太陽の柔らかな日差しと心地よい風に夏の終わりを実感する。
きっとすぐにでも今度は凍てつく冬の寒さがくるのであろう。
コートはいつでも出せるようにしておかなくては。

チームの日常はあまりにも平和だ。