舞われまわれ | ナノ
「マキナ、今いいですか?」 「何…?またお説教?」 「不貞腐れないでくださいよ。」 「私を売ったくせに…。」 畜生と呟けば困ったような顔をされた。 私に対する扱いがまるで年下に対するものなんじゃあないだろうか。 「終わったことですが、一応伝えておこうと思って。」 なんだろうか、と予想してみてもとくに内容が思い当らなかった。 黙ったまま先を促す。
「敵の能力は空間を操るものではありませんでした。」 「…え?」 「おそらく偏光でしょう。光の屈折の仕方を少し弄ってたんです。」 偏光、光の屈折。 頑張って理科の教科書を思い出す。 そんなものも学んだ気がしてきた。 「ってことは、私は相手の脇とか少しずれた所を攻撃させられ続けてたってこと!?!?」 「ええ、そして避けたつもりが相手の懐に飛び込んでいたのでしょう。」 そりゃ当たらないわけだ。 「そっか、だから逆に視覚以外の情報で相手を攻撃したときは当たったのか。」 タックルをしたときは、相手の気配と声のみが指標だった。
「―もう、何よそれぇ〜…。」 「僕ももっと早くに気付くべきでした。明日にでも、もっとスタンドについて教えてください。」 「ああ、うん、わかった。わざわざどうも。」 「いえ、それじゃあ。」 部屋から出て行くフーゴを見送る。 「…はぁ。」 偏光か。 ネタばらしをされればなんて事の無い能力だったのだ。 それでも、そんな能力に実質私は負けてしまったのだ。 「悔しいなぁ、もう…。」 脱力した途端、気の緩みからか、涙が溢れてきた。
自分は結局弱いままだ。 暗殺チームでの経験は確かに実りあるものだった。 でも、精神面では何も成長してなかったのだ。
不測の事態に陥った時の、先ほどの戦闘中の自分を思い出す。 何も考えずに、敵に突っ込んでいた。 「馬鹿じゃない。」 今ならそう思えるけれど、あの時は無我夢中だった。 それが、私の弱さなのだ。 周りがすぐに見えなくなってしまった。
「強く、ならなくちゃいけないのに。」
こんなんじゃあ、あの人を守れないじゃないか。 こんなんじゃあ、あの人に守らせてもらえないじゃないか。 もう、守られるのは嫌なんだ。
強く、なりたい。 彼を守れるくらい。
(…ブチャラティ、私に貴方を守らせて。)
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