舞われまわれ | ナノ







「な、んで…。」
僕はこのナイフで確実に男の腹を狙った。
なのに、僕の背後で男はぴんぴんしている。
命中したはずなんだ。
けれど刺したという感触も手には無い。
刃の軌道は男の横を抜けてしまった。

「ぎゃはははははっ!ハズレー!」
壁に反響する程の大声で男は笑った。
「俺はよぉ、不死身なんだよ。」
これがこの男のスタンド能力、だとすれば一体どんなものなのか。
攻撃意思を持った対象からの接触を防ぐのかそれとも実態を無くすことの出来る能力か。
それとも軌道を変える事が出来るのか?だとしたらどんな攻撃もあたらない。
それが男の言う不死身だろうか。
判断しようにも僕にはスタンドに対する知識が無さ過ぎる。

「さぁ忠誠を誓ってもらおうかあ。」

忠誠なんて形だけでいいなら今をやり過ごせばそれでいいのだ。
跪くくらいならいくらでもやってやるつもりだ。

「お前は俺の為に何をやる?」
「え。」
「強盗か?殺人か?それとも誘拐か?」
「…。」

考えが甘かったようだ。
思わず返す言葉に詰まる。
男はそんな僕のことなど気にせずに続けた。

「人間ってのは口先では何とでも言える。だから俺は行動で示してもらうことにしてるのさぁ。そうだなぁ、俺の為に邪魔な奴を殺してくれるか?」
「…それは一体。」

「ブローノ・ブチャラティ、パッショーネの構成員だ。」