舞われまわれ | ナノ







フーゴを待たせては悪いと思い手早くシャワーを浴び終える。
服のほうは染み抜きがうまく行くことを祈るしかない。
まだびしょびしょの髪を拭きながら私はリビングに戻った。

「待たせて悪いね。体調はどう?」
「平気です、すみませんでした。ありがとうございます。」
わざわざ立ち上がって頭を下げられるものだから、私は戸惑った。
「いいよ、そんな。」

正直いろいろあって碌に介抱してないのだ。
したことといえばこの部屋に運んできてソファに横たえたくらいである。
本当にそれだけなので礼を言われても困る。
「んで、それから色々ありまして。」

向かい合う形でソファにドカッと座り込む。
本当に色々ありまして、もうへとへとです。
でももっとヘトヘトであろうブチャラティはまだ仕事があるといって帰らなかった。
「ひとまず、あれは自殺じゃなかったの。」
あれというのは一緒に見に行った首吊りのことである。

「あの後同じような死体が二つ見つかって。カジノ絡みのゴタゴタが原因でね、殺人事件だったのよ。」
犯人はとあるゴロツキ集団、入団試験で死んで終わったかと思われていた男がスタンド能力を手に入れそのまま身を隠し徒党を組んで好き勝手をしていたらしい。
そしてカジノでも好き放題する為に邪魔な奴を消したかったようだ。
それさえわかればすぐに証拠は出揃った。
しかしパッショーネとしてはそれをそのまま警察に引き渡す、というわけがない。
カジノを仕切る身としてのメンツがある。

「そういうわけで、後はご想像にお任せするわ。」
「乗り込んだんですか?二人で?」
「まぁ。あ、ブチャラティも無事よ。報告やら後処理やらで今日は帰らないでしょうけど。」
そんな一大事に倒れていたことを悔いているのだろうか、フーゴの顔色は暗い。

「あ、何か食べる?簡単なものなら今から作れるけど。」
朝から何も食ってないんじゃないだろうか。
「平気です。」
「でも昼も食べてないでしょ?」
「…食欲なくて。」
「そっか…。じゃあ、栄養ドリンクでも。」
「大丈夫ですから。」

なんだか、またモヤモヤした。
なんでだろう。

「…そう、なら私は寝るわ。おやすみなさい。」
「ええ、おやすみなさい。」

モヤモヤとの決着はつかないまま、私は部屋に向かった。