舞われまわれ | ナノ







ついつい語気を荒めてしまった。
彼女は先輩なのだから礼儀をもって接しなくてはならないのに。

「ええ。平気よ。」
けれど、彼女は怒るわけでもなく、なんて事の無いように言い放った。
「腐ってるだけだもの。」
まるで今日はいい天気ね、とでもいうように。

「・・・。」
「大丈夫、あんな死体そうそうお目にかかることは無いと思うから。無理に慣れようとしなくてもいいんじゃない?」
あっけらかんと、彼女は言う。
じゃあ何でアンタは慣れてるんだよ。

「事故にあったくらいに思えばいい。」
彼女のいう事故ってのは慣れるくらいの頻度で起こるものなのか。
わけが分からない。

目の前のこの女の言っている事は矛盾だらけだ。

「とりあえず、トイレ行ってきなよ。」
「…いえ、大丈夫です。」
外の空気を吸い、体も落ち着いてきた。
それよりもブチャラティに言われたとおり待機するためにも早く戻らなくては。

ギャングの世界では失敗は許されないのだから。

「…僕に構わず、戻りましょう。」