舞われまわれ | ナノ







一階のリストランテの個室のテーブルで、私とフーゴはそれぞれの時間を過ごしていた。
「マキナ。」
「…何?」
どうにも、言葉は固くなる。
その原因は昨日のことだろうか。
「いえ、改めて謝っておこうと思って。気にしてるみたいなので。昨日はすみませんでした。」
「別に。」

彼にも私がそう思っているように見えるようだ。
しかし彼に謝られたところで全然スッキリしない。
一層モヤモヤするだけだ。
じゃあ自分はフーゴにどうして欲しいんだ?
いや、別に彼にどうこうしてほしいと言うわけじゃ無いんだろう。
ならこのモヤモヤの原因は一体、一層謎は深まるばかりである。

「そりゃあビックリしたけど、もう勉強は教わらないから大丈夫よ。」
ひどく刺々しい言い方になる。
表情筋が固まったみたいだ。
どんな顔をすればいいのかわからない。

「すみません。」
大人な笑みを浮かべるフーゴにモヤモヤは募る。
これはなんだろう。
怒りじゃ無い。
だから性質が悪いんだ。
悲しく、はあるかもしれない。
でもなんでだろう。
考えられる原因はやっぱりブチャラティに怒られたこと。
でもだからって今更ブチャラティにフーゴを叱って欲しいわけじゃない。
ブチャラティの言い分も納得だって出来てるんじゃないだろうか。
それじゃあなんだろう。

「待たせた。」
「おかえりなさい。」
「ああ、マキナ。どうした。」
「え、あ、ああ。お帰りなさい、ブチャラティ。」
ブチャラティが帰ってきた。

「早速だがマキナ。出れるか?」
「うん。仕事?」
「ああ、ちょっと厄介でな。フーゴは…ここで待機していてくれ。」
少し思案してブチャラティは彼に告げる。
彼と距離がおけるなら気分転換にもなるし良いかもしれない。

「待ってください、僕も連れて行って下さい。」
意外にでしゃばるな。

「…少しきついかもしれない。心して欲しい。」
「ありがとうございます。」
あれ、同行するんですか?